Jリーグ第8回理事会まとめ:J3監督ライセンス・審判制度・ACL改革のポイントを解説

こんにちは。風読珈琲店のカエデです。

今回は、2025年8月26日に開催されたJリーグ理事会の内容を取り上げます。Jリーグはこの日、2026/27シーズンからのJ3クラブ監督ライセンス基準の変更を正式に発表しました。若手指導者の登用を促進する制度改正であり、日本サッカー界の未来に向けた大きな一歩です。

また、審判制度の改善やACLエリートの勝点計算方法の見直しなど、競技運営に関する重要な議論も行われました。

この記事では、理事会のポイントをわかりやすく整理してご紹介します。

会見内容はこちら

J3監督ライセンス基準の変更

2026/27シーズンより、J3クラブ監督ライセンス基準は下記の通りとなります。

項目変更前変更後
必要ライセンスJFA ProライセンスJFA Aジェネラルライセンス以上
適用開始2026/27シーズン
例外AFCクラブ大会出場時はProライセンス必須同左

この変更により、J3クラブでは「JFA Aジェネラルライセンス」以上を保有する者が監督を務めることが可能になります。J3で昇格実績を出した監督は、翌年J2で指揮を執りながら「JFA Proライセンス」取得を目指すことも可能になります。

指導者ライセンス制度の概要

JFA(日本サッカー協会)が定める指導者ライセンス制度は、サッカー指導者の育成と質の向上を目的とした資格制度です。ライセンスは段階的に分かれており、最上位は「JFA Proライセンス」です。

ライセンス主な対象指導可能なレベル
D級初心者・地域指導者小学生・地域クラブ
C級基礎的な指導者U-12〜U-15
B級中級指導者高校・地域クラブ
A級上級指導者高校・大学・地域トップ
Aジェネラルプロ指導者候補J3クラブ監督など
Proライセンスプロ指導者J1・J2・日本代表監督など

JFA Aジェネラルライセンスの概要

  • J3クラブ監督に必要な資格(2026/27シーズンから)
  • Proライセンス取得を目指す指導者の登竜門
  • UEFA-AやAFC-Aライセンスと同等と認められる場合も対象
  • 研修内容:指導実践、戦術理解、分析力向上など
  • 研修費:22,000円(税込)+交通・宿泊費別途

JFA Proライセンスの概要

  • J1・J2クラブや日本代表監督に必要な最上位ライセンス
  • 旧称:S級ライセンス(2024年10月に名称変更)
  • AFCの「Diploma-Pro」と互換性あり

取得条件(いずれか)

  1. Aジェネラル取得後、1年以上の指導経験
  2. UEFA-AまたはAFC-A取得後、1年以上の指導経験
  3. Aジェネラル講習会でSランク評価+国際Aマッチ20試合以上またはプロ公式戦300試合以上の出場経験

審判制度改革に関する議論

審判制度の改善についても重要な議論が交わされました。特に注目されたのは、VAR判定後に審判がマイクで場内説明を行う仕組みの導入検討です。

背景と目的

Jリーグの野々村チェアマンは会見で、「VARがあった時に審判がマイクで今の事象が何なのかをお伝えするのは、興行的な観点からも必要だと思う。最近は世界でもやり始めている。JFAと一緒にこれから変えていけたらいいねという話が出た」と語りました。

この取り組みは、以下のような目的を持っています。

  • 初来場者やサッカー初心者にも判定の意図を分かりやすく伝える
  • 興行としての魅力を高め、観客体験を向上させる
  • 審判の説明責任を強化し、判定への理解と納得感を促進する

世界の主要リーグでは、すでにVAR判定時に審判がマイクで説明する事例が増えており、Jリーグもこの流れに追随する形で制度設計を進めています。JFAとの協議を通じて、技術的・運用的な課題を整理し、導入に向けた準備が進められています。

審判育成と制度改善の取り組み

Jリーグは2023年からJFAと連携し、審判領域の質向上に向けた取り組みを本格化させています。2025シーズンでは、以下のような施策が実施されています。

  • プロフェッショナルレフェリー(PR)の人数を19名から24名に増員
  • 審判員の手当見直しと待遇改善
  • 海外審判の招へい(ベルギー、イングランド、ドイツなど7か国)
  • 元選手OB向けの早期育成プログラム(最短5年でJ1担当審判へ)

これらの施策は、審判の技術力向上だけでなく、判定の透明性と説明責任の強化にもつながるものです。

オンフィールドレビュー(OFR)の不足や過剰介入

2024年シーズンの分析では、VAR関連のエラー件数は減少傾向にあるものの、オンフィールドレビュー(OFR)の不足や過剰介入といった課題が残っています。

OFRとは?

オンフィールドレビュー(OFR)とは、VARからの助言を受けた主審が、ピッチ脇のモニターで該当シーンを自ら確認し、判定を再検討するプロセスです。主審が最終判断を下すための重要な手続きです。


OFRの「不足」とは?

2024年J1リーグでは、本来OFRを行うべきだったのに見逃されたケースが8件発生しました。

内訳は以下の通りです。

  • PKの見逃し:4件
  • PK取り消しの見逃し:3件
  • レッドカード相当の不正行為の見逃し:1件

これらは、重大な判定変更が必要だったにもかかわらず、主審が映像確認を行わなかった事例です。結果として、誤審や不公平な判定につながる可能性があり、選手・監督・観客からの不満が生じています。


OFRの「過剰介入」とは?

一方で、OFRを行う必要がなかったのに実施されたケースも4件報告されています 。

例:

  • 明確なPK判定に対して、映像確認を行ったが結局判定変更なし
  • 得点に至る攻撃過程(APP)に関する軽微な接触に対してOFRを実施

これらは、映像で明確な誤りがないにもかかわらず、試合を不必要に中断してしまったケースです。試合のテンポを損ない、観客や選手の集中力にも影響を与える可能性があります。


VARオンリーレビューの課題

VARオンリーレビュー(主審が映像確認せず、VARの助言のみで判定変更)に関しても、以下のような課題が報告されています:

  • 本来VARオンリーで介入すべきだったのに見逃された:3件(すべてオフサイド関連)
  • 不要なVARオンリー介入:1件(オフサイド)

このように、VARチームの判断精度や主審との連携不足が、判定の信頼性に影響を与えていることが分かります。


改善に向けた取り組み

JFA審判委員会は、これらの課題を認識し、以下のような改善策を検討・実施しています。

  • VAR判定時の音声・映像の公開(透明性向上)
  • 審判員への戦術理解・選手心理の教育強化
  • 3Dオフサイドライン技術の導入による判定精度向上
  • OFRの平均所要時間短縮(2024年は約40秒短縮)

OFRの不足は「重大な誤審の温床」となり、過剰介入は「試合の流れを損なう要因」となります。Jリーグはこれらのバランスを取るため、技術的な精度向上と運用哲学の見直しを進めています。今後は、観客や選手が納得できる判定プロセスの確立が求められます。

ACLエリートの勝点計算方法の改善

昨年のACLで起きた順位変動問題(ヴィッセル神戸の例)を受け、勝点を消化試合数で割る方式に変更されました。

ACLエリートの勝点計算方法が変更された背景

2024年のACLでは、山東泰山の辞退によりグループ内の試合数が不均等となり、ヴィッセル神戸が3位から5位に順位を下げるという事態が発生しました。このような不公平な順位変動を防ぐため、AFC(アジアサッカー連盟)は2025/26シーズンから勝点を「消化試合数」で割る方式に変更しました。

この提案は、JリーグとJFA(日本サッカー協会)が連携してAFCに働きかけたものであり、AFC競技会委員会に所属する宮本恒靖氏が議論をリードしました。


新しい勝点計算方式の概要

ACLエリートでは、予選リーグで各クラブが8試合(ホーム4、アウェー4)を戦います。従来のようなグループ分けはなく、東西それぞれ12クラブが1つのリーグを構成し、異なる8クラブと1試合ずつ対戦します。

勝点計算方法(2025/26〜)

  • 勝利:3点
  • 引き分け:1点
  • 敗北:0点
  • 順位決定は「勝点 ÷ 消化試合数」で比較

この方式により、試合数が異なるクラブ間でも公平な順位評価が可能になります。


【参考】ACLの構造改革と意図

AFCカップとACLは、2024-2025年シーズンより以下の3大会に再編されました。

  1. ACLエリート(トップ24クラブ)
  2. ACL2(中堅クラブ向け)
  3. AFCチャレンジリーグ(発展途上国クラブ向け)

この再編の目的は、技術力の高いクラブによる「少数精鋭」の大会を創出することです。賞金も大幅に増額され、ACLエリートの優勝賞金は1,000万ドル(約14.8億円)に設定されています。

まとめ

今回のJリーグ理事会では、指導者ライセンス制度の柔軟化、審判制度の透明性向上、ACLエリートの公平な順位評価など、複数の改革が議論されました。いずれも、日本サッカーの競技力と魅力を高めるための前向きな取り組みです。

Jリーグがより開かれたリーグとして進化していくために、今後の制度設計や運用の変化にも注目していきたいと思います。風読珈琲店では、こうしたスポーツ界の動きも丁寧に追いかけていきますので、ぜひ次回もお楽しみに。

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