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資産運用論 第4回:リスク管理と「航路を守る」マインドセット【ほったらかし投資術 解説4/4】

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1. はじめに:運用を「続ける」ことの難しさ

これまでの3回の講義で、私たちは投資の目的、インデックス投資の理論、そして新NISAを活用した具体的な実践方法(オルカンの一本買い)を学んできました。仕組みを作るだけなら、実はそれほど難しくはありません。しかし、資産運用において最も難しく、かつ重要なのは、その仕組みを「数十年間にわたって維持し続けること」です。

市場は常に穏やかではありません。時には「100年に一度」と言われるような暴落が、数年のうちに何度もやってくることもあります。そのような嵐の中で、自分の「航路を守り(Stay the Course)」、投資を投げ出さないためには、強固なリスク管理と正しいマインドセットが不可欠です。本日の最終講義では、投資を一生涯の友とするための「守り」の技術を学びます。

2. 最重要の意思決定:リスク資産額を「金額」で決める

資産運用を始める際、多くの人が「資産の何%を株に回すべきか」と比率で考えがちですが、本講義(および「ほったらかし投資術」)では、「比率」ではなく「金額」で決めることを強く推奨します。個人の経済状況は多様であり、画一的な比率は役に立たないからです。

リスク資産(投資信託など)の額を決める際の具体的な手順は以下の通りです。

① 「最悪のケース」を数値で想定する

運用において、将来の予想が外れた場合の「プランB」を持っておくことは人生全般において重要です。本講義では、全世界株式インデックス投資における「最悪の損」を、「1年後に投資額の3分の1の損」と想定します。逆に「ラッキーな場合の儲け」は「1年後に4割の儲け」、そして平均的なリターンを「年率5%」と考えます。

② 損失許容額から逆算する

自分が「これだけの損なら、一時的に発生しても生活や精神に致命的な影響を与えない」と思える最大限の金額をまず決めます。その「最大限許容可能な損失額の3倍」までを、リスク資産への投資上限額とするのです。

  • 例: 100万円の損までなら耐えられると考えるなら、300万円まで投資に回しても良い、という計算になります。

③ 生活実感に換算する(360万円の法則)

「いくらまで損に耐えられるか」を直接考えるのが難しい場合、「老後の生活費」に換算してみるのが有効です。リタイア後の期間を30年(360ヶ月)と想定すると、360万円の損失は「老後の生活費が毎月1万円減ること」に相当します。「老後の生活費が月1万円減っても大丈夫だ」と思えるなら、その3倍の1080万円までリスク資産を持って良い、という具体的な指針が得られます。

3. 暴落にどう立ち向かうか:「マーケットに居続ける」重要性

運用を始めると、必ずと言っていいほど「暴落」に直面します。2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災、2020年のコロナ・ショックなど、市場は数年おきに大きく揺れ動いてきました。

投資が続けられない2つのパターン

せっかく投資を始めた人が挫折するのには、主に2つの理由があります。

  1. 下落時の恐怖: 株価が下がった時に怖くなって売ってしまい、その後の回復局面に乗れないケースです。
  2. 利益確定の誘惑: 少し儲けが出た時に「今のうちに」と売ってしまい、その後のさらなる上昇を逃してしまうケースです。

「マーケット・タイミング」を計る誘惑を捨てる

「株価が下がりそうだから一旦売り、安くなったら買い直そう」と考える人を「マーケット・タイマー」と呼びますが、これはプロの世界でも概ね上手くいかないことが証明されています。株価の急上昇は予測できない日に突然起こることが多いため、常に資産を投じた状態で「マーケットに居続ける」ことこそが、リスク・プレミアムを確実に手にする唯一の方法なのです。

暴落時にすべきことは、何もしないことです。今の株価には既に最新の情報が反映されていると考え、「上げ相場にも下げ相場にも、すべて付き合う」という覚悟を持つことが「賢い投資家」の行動ルールです。

4. 運用をいつ終わらせるか:出口戦略の考え方

「ほったらかし投資術」に、決まった「ベストな終わらせ時」はありません。

お金は「手段」である

原則として、「人生においてまとまったお金が必要になった時」が解約の時です。お金はあくまでも「手段」であり、使うためにあるものです。自分の買値や現在の損益、あるいは相場の状況といった「相場の都合」ではなく、自分の「人生の都合」に合わせて、必要額をその都度、部分的に解約して換金すれば良いのです。

各制度の出口のルール

  • 新NISA: いつでも解約可能です。非課税期間が無期限のため、必要になるまで持ち続けるのが基本です。
  • iDeCo: 原則60歳まで引き出せません。受取時には「年金(分割)」か「一時金(一括)」かを選択でき、税制上のメリットを考慮して受け取り方を決めることになります。

5. 結論:人生を最大化するための「ほったらかし」

全4回の講義を通じてお伝えしてきたのは、単なるテクニックではありません。それは、「お金の心配から解放され、人生そのものを楽しむための思想」です。

人的資本への投資を忘れない

特に若い世代の皆さんにとって、最大の資産は金融資産ではなく、自分自身の「人的資本」です。無理に生活を切り詰めて投資額を増やす(いわゆる過度なFIREを目指す)あまり、若い時期にしかできない経験や自己研鑽の機会を逃すことは、人生全体で見れば大きな損失になりかねません。

投資を「シンプル」にする理由

私たちが「全世界株式一本」という極めてシンプルな方法に辿り着いたのは、「努力しても改善できない問題(市場の予測など)には努力せず、自分の人生を良くすることにこそ時間とエネルギーを使いたい」と考えたからです。

資産運用は、一度正しい仕組みを作ってしまえば、あとは「ほったらかし」で十分です。その空いた時間で、仕事に打ち込み、趣味に没頭し、大切な人との時間を過ごしてください。それこそが、本講義が目指す「合理的な資産運用」の真のゴールです。


以上で、全4回の「資産運用論」を終了します。皆さんのポートフォリオと人生のご多幸を祈っています。

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