こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
先日、大学時代の同期から「うちの会社、給料をPayPayで受け取れるようになるらしいよ」という話を聞いて驚きました。振込先といえば銀行口座一択だと思っていたので、調べてみると「給与デジタル払い」という制度がすでに始まっていて、じわじわと導入企業が増えているようです。今日はこの制度について、2026年時点の最新事情を整理してみます。
「そんな制度、聞いたこともなかった」という方も多いかもしれませんが、実は解禁から3年以上が経ち、導入企業は確実に広がりつつあります。仕組みと注意点を知っておけば、いざ自分の勤務先で導入されたときにも慌てず判断できるはずです。
給与デジタル払いとは何か

給与デジタル払いとは、その名のとおり、毎月の給料をPayPayや楽天ペイなどのスマホ決済アプリの口座に直接振り込んでもらえる制度です。労働基準法では、賃金は原則として通貨(現金)で直接払うことが定められていますが、例外として銀行口座・証券口座への振込が長年認められてきました。それに加えて2023年4月1日から、一定の要件を満たした「資金移動業者」の口座への賃金支払いが新たに解禁されたのが、この給与デジタル払いです。
制度上のポイントは、会社が一方的に導入できるものではないという点です。会社が給与デジタル払いを導入するには、まず労働者の過半数代表と労使協定を結ぶ必要があり、そのうえで、実際に利用するかどうかは従業員一人ひとりの個別同意に委ねられます。「会社に強制されてPayPay払いにされてしまう」ということは制度上起こらない仕組みになっているので、その点はまず安心してよいポイントです。
指定を受けている資金移動業者は4社
給与デジタル払いに使えるのは、どのサービスでもよいわけではなく、厚生労働大臣から指定を受けた資金移動業者に限られます。2026年時点で指定を受けているのは、次の4社です。
- PayPay株式会社(PayPay給与受取):1回あたりの受入上限額は20万円
- 株式会社リクルートMUFGビジネス(COIN+):1回あたりの受入上限額は30万円
- 楽天Edy株式会社(楽天ペイ給与受取):1回あたりの受入上限額は10万円
- auペイメント株式会社(au PAY 給与受取):1回あたりの受入上限額は10万円
口座残高には全体で100万円の上限がある
個別の受入上限額とは別に、制度全体としてのルールとして資金移動業者口座の残高は100万円が上限と定められています。万が一残高が100万円を超えてしまった場合は、超過分が速やかに指定の銀行口座へ自動的に払い出される仕組みになっており、口座に給料が溜まりすぎてしまう心配はありません。あくまで「日常の決済用に使う分だけをデジタル払いにし、大部分は従来どおり銀行口座で受け取る」という設計思想の制度だと理解しておくとよさそうです。
実際にどれくらい導入が進んでいるのか

解禁当初は「本当に使う会社があるのか」と懐疑的な声も多かった給与デジタル払いですが、2026年に入って導入企業は着実に増えています。PayPayが提供する「PayPay給与受取」は、2025年4月時点ですでに導入企業数が100社を突破。さらに2026年2月には、大手100円ショップチェーンの株式会社大創産業が「楽天ペイ給与受取」の導入に合意したことも発表されており、大規模な小売・サービス業を中心に採用の動きが広がっています。
とはいえ、全企業のうち導入済みはまだ一部にとどまっており、「銀行口座への振込が当たり前」という状況が急に変わるわけではありません。あくまで、給与の受け取り方の選択肢が一つ増えた、という段階だと捉えておくのが実態に近いでしょう。
20代社会人にとってのメリット・デメリット

実際に自分が使うとしたら、というイメージで整理すると、メリットとデメリットは次のようになります。
メリット
- チャージの手間が減る:PayPayやau PAYを日常的に使っている人にとっては、銀行からアプリへ都度チャージする手間がなくなる
- 銀行口座を持たない人でも受け取りやすい:就労ビザで来日したばかりの外国人労働者など、銀行口座の開設が難しい層への給与支払い手段として期待されている
- 決済アプリのキャンペーンと組み合わせやすい:給与が直接アプリに入ることで、そのままキャンペーン対象の決済に充てやすい
デメリット・注意点
- 給与の全額をデジタル払いにはできない:各社の受入上限額(10万〜30万円)を超える分は、結局これまでどおり銀行口座に振り込まれる
- 資金移動業者が破綻した場合の保護は銀行預金と仕組みが異なる:預金保険制度の対象ではなく、別建ての保証機構による保全の仕組みが用意されている
- 会社が導入していなければそもそも使えない:労使協定の締結が前提のため、勤務先の対応状況次第
個人的には、家賃や貯蓄に回す部分は引き続き銀行口座で受け取りつつ、日々の生活費に使う分だけをデジタル払いにする「一部利用」から試してみるのが現実的だと感じています。全額をデジタル払いにする必要はなく、あくまで選択肢の一つとして捉えるのがちょうどいいバランスだと思います。
そもそもなぜこの制度が作られたのか
給与デジタル払いが議論され始めた背景には、いくつかの社会的な事情があります。よく挙げられるのが、日本で働く外国人労働者の増加です。銀行口座の開設には在留資格の確認など一定のハードルがあり、来日直後は口座を持てないまま働き始めるケースも少なくありません。資金移動業者の口座であれば銀行口座よりも開設のハードルが低いため、こうした層への給与支払い手段として期待されている、という側面があります。
もう一つの背景が、キャッシュレス決済の普及そのものです。日常の支払いのほとんどをスマホ決済で済ませる人が増えるなかで、「給与を受け取ってからわざわざアプリにチャージする」という一手間を省きたいというニーズが企業側・労働者側の双方にあり、それに応える形で制度化が進みました。国としても、資金移動業者を経由した送金・決済インフラを整備することで、金融サービス全体のデジタル化を後押しする狙いがあると言われています。
資金移動業者が破綻した場合の保護の仕組み
銀行預金であれば預金保険制度によって一定額まで保護されますが、資金移動業者の口座はこの制度の対象外です。その代わり、給与デジタル払いに使われる口座については、指定資金移動業者に対して保証機関による保全措置が義務付けられており、万が一サービスを提供する会社が破綻した場合でも、労働者の資金が全額速やかに弁済される仕組みが用意されています。銀行預金とまったく同じ保護の形ではないものの、「制度上まったくの無保証というわけではない」という点は押さえておくと安心材料になります。
導入企業で働くことになったら確認したいこと
もし勤務先が給与デジタル払いを導入していると知ったら、まずは「利用するかどうかは完全に任意である」ことを前提に、次の点を確認しておくと安心です。1つ目は、対応している資金移動業者がどのサービスか(PayPay・COIN+・楽天ペイ・au PAYのどれか)。2つ目は、受入上限額が自分の使い方に見合っているか。3つ目は、給与明細上の扱いや、万が一サービスが利用できなくなった場合の切り戻し手続きです。会社の人事・総務担当に聞けば、労使協定の内容と合わせて説明してもらえるはずです。
私自身は複数の決済アプリを場面によって使い分けています。給与デジタル払いも、それと同じ発想で「銀行口座とデジタル払いを併用する」くらいの距離感で付き合うのがちょうどよさそうです。

Q. デジタル払いにすると振込手数料は変わりますか?
A. 給与デジタル払いは、あくまで賃金の支払い方法の一つとして労働基準法上位置づけられているもので、労働者側に別途の手数料が発生する制度ではありません。会社側の給与計算・振込フローに関する費用負担の仕組みは提供各社によって異なりますが、従業員個人が振込手数料のようなものを負担する設計にはなっていません。制度の詳細は勤務先の労使協定や利用規約で必ず確認するようにしてください。
Q. 一度同意したら、あとから銀行振込に戻せませんか?
A. 個別同意はあくまで労働者側の意思に基づくものなので、状況が変わって「やはり銀行振込に戻したい」と思った場合は、会社に申し出ることで変更できるのが基本的な考え方です。実際の変更手続きの流れは会社ごとの運用によるため、導入企業で働くことになった際は、切り替え・解除の手続き方法もあわせて確認しておくと安心です。無理に一度きりの選択と捉えず、ライフステージの変化に応じて見直せる制度だと考えておくとよいでしょう。
まとめ
- 給与デジタル払いは2023年4月に解禁された制度で、労使協定と従業員個別の同意が前提
- 指定資金移動業者はPayPay・COIN+・楽天ペイ・au PAYの4社(2026年時点)
- 1回あたりの受入上限額は10万〜30万円、口座残高全体の上限は100万円
- PayPay給与受取は導入企業100社突破、大創産業も楽天ペイ給与受取の導入に合意するなど採用が拡大中
- 給与全額ではなく、生活費の一部だけデジタル払いにする「併用」が現実的な使い方
「給料日にアプリを開いたら残高が増えている」という体験は、しばらくは珍しい光景かもしれません。ですが、選択肢としてこの制度の存在を知っておくだけでも、将来勤務先の制度が変わったときに慌てずに判断できるはずです。

