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テキスト・ヒップとは|韓国の若者に読書ブームが起きた理由

スツールの上にミニマルに積まれた本
Photo by kaboompics.com on Pexels
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こんにちは。風読珈琲店のカエデです。

最近、韓国発のカルチャーニュースで「テキスト・ヒップ(텍스트힙)」という言葉をよく見かけるようになりました。直訳すると「文字+格好いい」。つまり「本を読む行為そのものがオシャレでクール」という価値観が、韓国の20代を中心に急速に広がっているというのです。カフェ巡りと読書が趣味の私にとって、これは見過ごせないニュースでした。

今回は、なぜ今テキスト・ヒップが流行しているのか、具体的にどんな数字や現象として現れているのかを、一次情報を確認しながら整理してみます。日本にいる私たちにとっても、読書とカフェ文化の関係を考え直すヒントになりそうな話だと感じました。


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「テキスト・ヒップ」ってそもそも何?

街角で本を読む若い女性
Photo by Andrea Piacquadio on Pexels

「テキスト・ヒップ」は、韓国語で「文字」を意味する「テキスト(텍스트)」と、「格好いい」「イケてる」を意味する「ヒップ(힙)」を組み合わせた造語です。「本を読む・書く・語るという行為そのものが、洗練されたライフスタイルの象徴になっている」という現象を指します。

これまでも「読書は良いことだ」という価値観自体は珍しくありませんでした。テキスト・ヒップが新しいのは、読書が「教養のため」ではなく、「ファッションやカフェ巡りと同じ感覚のオシャレな趣味」として消費されている点です。書店で本を選ぶ姿、カフェで読書する自分を撮った写真をSNSに投稿する行為までを含めて、ひとつの文化として成立しています。

  • 語源:テキスト(文字)+ヒップ(格好いい)の韓国語の造語
  • 意味:読書・書店巡り・読んだ本の記録をオシャレなライフスタイルとして楽しむこと
  • 広がっている層:主に韓国の20代(MZ世代の中でも特にZ世代寄り)
  • 関連する韓国語:필사(筆写=好きな文章を手で書き写すこと)

火をつけたのは韓江(ハン・ガン)のノーベル文学賞受賞

テキスト・ヒップという言葉自体は以前から使われ始めていましたが、一気に社会現象と呼べる規模に広がった決定的なきっかけは、2024年10月に韓国人作家として初めて韓江(ハン・ガン)さんがノーベル文学賞を受賞したことでした。自国の作家が世界最高峰の文学賞を受賞したというニュースは、それまで読書に距離を感じていた若者たちの背中を押し、「今こそ本を読んでみよう」という空気を一気に作り出しました。

受賞後、韓江さんの代表作は書店で品切れが相次ぐほどの人気となりました。日本でも翻訳版が刊行されている代表作『菜食主義者』は、暴力性や身体性をめぐる寓話的な物語として世界的に高く評価された一冊です。テキスト・ヒップの原点を知る意味でも、まず手に取ってみる価値のある作品だと思います。

ハン・ガン/クオン
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数字で見る韓国の若者の読書ブーム

色とりどりの本が並ぶ書店の書棚
Photo by Erik Mclean on Pexels

韓国文化体育観光部が発表した「2025年国民読書実態調査」(調査期間:2024年9月〜2025年8月)によると、20代の年間総合読書率は75.3%で、前年から0.8ポイント上昇しました。これは調査対象となった全世代の中で、唯一読書率が上昇した年代という結果です。60代以上の読書率が14.4%にとどまっているのと比べると、その差は歴然としています。

  • 20代の年間総合読書率:75.3%(前年比+0.8ポイント、全世代で唯一の上昇)
  • 20代の電子書籍読書率:59.4%(紙の本の45.1%を上回り、デジタル優位)
  • 10〜20代の小説・詩・戯曲の購入量:2024年に前年比38.1%増、2025年も前年比15.3%増
  • 詩集・エッセイの売上:前年比約30%増(出版業界レポートより)

2026年6月にソウル・COEXで開催された「ソウル国際図書展」は5日間で約15万人が来場し、教保文庫(キョボムン)とCUのコラボによるポップアップストア「文章一口商店」も、江南店・光化門店で若者の行列ができるほどの人気を集めました。書店やイベント会場が、若者にとっての新しい「映えスポット」になっている様子がうかがえます。

一方で興味深いのは、韓国の成人全体で見た年間総合読書率は38.5%(2025年)と、むしろ前年より下落している点です。つまり「テキスト・ヒップ」は社会全体の読書量が底上げされているのではなく、20代という特定の世代に限定的に起きている現象だということです。若者の間での盛り上がりと、社会全体の「活字離れ」が同時進行しているという、少しねじれた構図が今の韓国の読書市場の実態のようです。

SNSでどう広がっているのか

開いた本の上にコーヒーカップと葉を添えたフラットレイ
Photo by Feyza Daştan on Pexels

テキスト・ヒップの広がり方を見ていくと、SNSでの発信のしやすさが大きな推進力になっていることが分かります。本の表紙、心に残った一文、あるいはカフェで読書する自分の姿を撮影し、ハッシュタグを付けて投稿するのが定番のスタイルです。

  • 북스타그램(ブックスタグラム):本にまつわる投稿専用のInstagramアカウントを作るカルチャー
  • 오독완(オドクワン):「今日読書完了」の略。その日読んだ範囲を記録するハッシュタグ
  • 독파민(トクパミン):「読書」と「ドーパミン」を組み合わせた造語。読書で得られる高揚感を表す
  • 필사(筆写):好きな一節をノートに手で書き写し、その写真を投稿する文化

K-POPアイドルの影響も無視できません。IVEのウォニョンさんが移動中にショーペンハウアーの哲学書を読んでいることを明かしたり、LE SSERAFIMやBLACKPINKのメンバーが本を手にした姿を頻繁に見せたりと、「推し」が読書をしている姿そのものが若い世代の憧れの対象になっています。BTSのRMさんが薦めた本が日本でもベストセラーになった例もあり、K-POPカルチャーと読書文化が地続きになっているのが、今の韓国らしい特徴だと感じます。

「見せるための読書」という批判の声も

ここまで明るい側面を中心に紹介してきましたが、韓国国内ではテキスト・ヒップに対して冷静な、あるいは懐疑的な見方も存在します。よく指摘されるのが「本を読むこと自体よりも、読んでいる姿をSNSに投稿することが目的になっているのではないか」という批判です。実際に、本を最後まで読み切らずに表紙だけを撮影して満足してしまう、いわゆる「見せるための読書」を揶揄する声も出ています。

また、テキスト・ヒップが盛り上がる一方で、韓国の出版市場全体は決して好調とは言えません。前述の通り成人の総合読書率は下落傾向にあり、紙の本だけで見るとさらに低い水準にとどまっています。「特定の世代・特定のジャンル(詩集やエッセイなど軽く読める短い作品)に限定されたブームであり、出版不況という構造的な問題を覆すほどの力はない」という、やや醒めた分析も業界内では語られています。

とはいえ、きっかけが何であれ、これまで本を手に取らなかった若者が書店に足を運ぶようになったこと自体は、素直にポジティブな変化だと私は思います。「オシャレだから」という入り口から入って、結果的に読書そのものが好きになる人が増えるなら、それはそれで悪くない流れなのではないでしょうか。

カエデが感じた、日本のカフェ×読書文化への示唆

今回テキスト・ヒップについて調べていて印象的だったのは、聖水洞(ソンスドン)のように、もともと町工場が並んでいたエリアが「ソウルのブルックリン」と呼ばれるほどのカフェ・独立書店の集積地に生まれ変わっている、という話です。古い建物をリノベーションした空間で本を読む体験そのものが、ひとつの目的地になっているのだと思います。

これは、私たちが「風読珈琲店」で大切にしたいと思っている、コーヒーと本が並び立つ時間の過ごし方そのものです。日本でも独立系書店や本と過ごせるカフェは着実に増えていますが、韓国のように「読書=オシャレでクールな行為」として若い世代の間で言語化され、SNSでポジティブに共有される流れは、まだそこまで一般的ではないように感じます。

日本国内でも「読む」「書く」を全身で楽しむイベントが各地で開催されており、少しずつ読書の楽しみ方が多様化してきています。

「読む」「書く」を全身で楽しむ一日。「第2回 読の市」がJR大阪駅・時空の広場で10月17日〜18日に開催
本屋さんをぶらぶら歩いて、気になる背表紙を見つけたときのわくわく感が好きで、休日はよく梅田や京都の書店をはしごしています。とはいえ、いつもの書店とは少し違う「本のお祭り」に足を運んでみると、また違った本との出会いがあるんですよね。

難しく捉えず、まずは気になった一冊を、お気に入りのカフェの席で開いてみる。テキスト・ヒップという言葉が教えてくれるのは、案外そのくらいシンプルな一歩なのかもしれません。

読書ブームの背景にある「本屋という空間」そのものにも目を向けてみると、日本国内にも規模で驚かされる書店がたくさんあります。売り場面積で見た日本最大の書店ランキングをまとめた記事もあわせてどうぞ。

日本最大の書店ランキングTOP10|Xで話題の「デカすぎる本屋」
Xで「入ったら最期、抜け出せない」と話題のジュンク堂池袋本店より広い書店が実在する。函館蔦屋書店(約8,265㎡)を筆頭に、売り場面積で見る日本最大の書店ランキングTOP10を話題の投稿とともに紹介します。

まとめ

  • 「テキスト・ヒップ」は韓国発の造語で、読書をオシャレなライフスタイルとして楽しむ文化
  • 2024年の韓江(ハン・ガン)ノーベル文学賞受賞が流行の決定的なきっかけに
  • 韓国20代の読書率は75.3%で全世代唯一の上昇、電子書籍優位のデジタル世代らしい特徴も
  • 一方で韓国成人全体の読書率は下落しており、20代に限定的なブームという側面もある
  • 北スタグラムや筆写など、SNSでの発信のしやすさが流行を後押ししている

読書がオシャレでクールなものとして語られる社会があるというのは、本好きの一人として素直に嬉しいニュースでした。次にカフェへ行くときは、スマホではなく一冊の本を持って出かけてみようと思います。この記事が、誰かにとって本を手に取る小さなきっかけになれば嬉しいです。

それでは、また次の記事でお会いしましょう。

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