光文社古典新訳文庫9月新刊『万葉集』『意志と表象としての世界1』を紹介

書店に並ぶ文庫本 本
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こんにちは。風読珈琲店のカエデです。

今の日本語で古典を訳し直してくれる光文社古典新訳文庫。

9月の新刊は2点。日本最古の歌集から350首を選んで新しく訳した『万葉集』(佐々木和歌子 編・訳)と、ドイツの哲学者ショーペンハウアーの主著『意志と表象としての世界1』(中山元 訳、全4巻の第1巻)です。和歌とドイツ哲学という、まったく違う2冊が同じ月に並びました。それぞれの中身と、どんな人におすすめかを紹介します。

今回紹介する2冊はこちら。

佐々木和歌子 編・訳/光文社
¥1,320 (時点)
ショーペンハウアー 著/中山元 訳/光文社
¥1,650 (時点)
『死と方位磁石 ボルヘス自選短編集』ホルヘ・ルイス・ボルヘス/寺尾隆吉 訳

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2026年9月の光文社古典新訳文庫の新刊

書店に並ぶ文庫本
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どちらも2026年9月9日発売です。まずは概要を一覧にまとめます。

万葉集

  • 編・訳者:佐々木和歌子
  • 価格:1,320円(税込)
  • ISBN:978-4-334-11144-1
  • 内容:約4,500首から350首を厳選。原歌・現代語訳・鑑賞メモつき

意志と表象としての世界1

  • 著者:アルトゥール・ショーペンハウアー(1788〜1860)
  • 訳者:中山元
  • 価格:1,650円(税込)
  • ISBN:978-4-334-11145-8
  • 内容:全4巻の第1巻。第1巻「表象としての世界」と第2巻「意志としての世界」の第一考察(第1〜29節)を収録

『万葉集』――「うたわれた声」が聞こえる350首

秋の山と自然の風景
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『万葉集』は、奈良時代に成立したとされる日本最古の歌集。天皇や貴族だけでなく、東国の農民や防人(さきもり)など、名前も残っていない人たちの歌まで約4,500首が収められています。土地や自然への思い、恋、親子の愛情、日々の暮らし――詠まれているテーマは、驚くほど今の私たちと地続きです。

今回の新訳は、その中から350首を厳選したもの。各歌に原歌・現代語訳・鑑賞メモがついているので、古文が苦手でも「この歌はこういう気持ちなんだ」とすっと入ってきます。帯のコピーは「『うた』の心が躍動する画期的新訳350首。」。訳者の佐々木和歌子さんは、万葉の歌は机の上で頭をひねって作られたものではなく、節をつけて高らかにうたわれた声が聞こえてくるものだ、と述べています。

構成もかなり親切です。冒頭に「読む前に読む『万葉集』の基礎知識」があり、本文は巻第一から巻第二十まで原典の順番どおり。巻末には万葉集関連の地図、解説、年譜、訳者あとがき、そして原歌の初句と主要歌人からひける索引までついています。好きな歌人から拾い読みする、という使い方もできそうです。

佐々木さんは1972年青森県生まれの文筆家で、『やさしい古典案内』などの著書のほか、同じ古典新訳文庫で清少納言『枕草子』、後深草院二条『とはずがたり』も訳しています。

わたし自身、学生時代を奈良で過ごした妻と一緒に奈良を歩くと、「ここが歌に詠まれた場所なんだ」と思う瞬間がよくあります。地図つきの本書は、奈良や飛鳥を旅する前に読む一冊としてもおすすめです。

『意志と表象としての世界1』――世界は「意志」である

机の上の哲学書
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ショーペンハウアーはダンツィヒ(現在のポーランド・グダニスク)生まれのドイツの哲学者。ゲッティンゲン大学で学び、イェーナ大学で博士号を取得、1820年にはベルリン大学で講義を行いましたが、やがて大学を離れて在野の学者として研究を続けました。晩年の随筆集『余録と補遺』(1851年)でようやく広く知られるようになり、ニーチェやワーグナーにも大きな影響を与えています。

本書はそんな彼の主著です。中心にあるのは、この世界は本質的には「意志」であり、同時にすべて「表象」でもあるという考え方。ここでいう「意志」は、私たちが「〜しよう」と決める意志というより、身体の根っこにある衝動や欲望のようなもの。カントの哲学を土台にしながら、カントにはなかった発想をつけ加えた、と紹介されています。

新訳は全4巻の予定で、第1巻には第一巻「表象としての世界の第一考察」(第1〜16節)と第二巻「意志としての世界の第一考察」(第17〜29節)、初版・第二版・第三版の序文、訳者による解説とあとがきが収められています。続刊は第2巻が2027年1月、第3巻が2027年5月、第4巻が2027年9月の予定です。

訳者の中山元さんは、カント、ルソー、ニーチェ、ハイデガーなど数多くの哲学書を訳してきたベテラン。古典新訳文庫ではカント『純粋理性批判』の新訳でも知られています。難しい本であることは間違いありませんが、丁寧な解説を手がかりに、1年かけて全4巻を少しずつ読み進めるのもいい挑戦になりそうです。

分厚い古典を挫折せずに読むコツ

今回の2冊は、どちらもそれなりにボリュームがあります。最初から最後まで一気に読もうとすると、途中で手が止まってしまいがち。わたしが古典を読むときに意識しているコツを、いくつか紹介します。

  • 先に解説を読む:古典新訳文庫の解説は、作品の背景や読みどころを丁寧にまとめてくれています。本文の前に目を通しておくと、迷子になりにくくなります
  • 『万葉集』は「1日数首」でいい:歌集は頭から順に読む必要はありません。寝る前やカフェでの休憩に、ぱらっと開いたページの数首を味わうだけでも十分楽しめます
  • 哲学書は「節」単位で区切る:『意志と表象としての世界』は節ごとに区切られているので、「今日は1節だけ」と決めて読むと続けやすいです。わからない箇所は印をつけて先に進み、あとで解説と照らし合わせるのがおすすめ

古典は「全部理解しなきゃ」と思うほどしんどくなります。気に入った一首、心に残った一文が見つかれば十分くらいの気持ちで向き合うと、長く付き合える一冊になるはずです。

2冊はどんな人におすすめ?

  • 『万葉集』がおすすめな人:古文は苦手だけど和歌に触れてみたい人、奈良・飛鳥への旅行を考えている人、短い言葉で心が動く体験をしたい人
  • 『意志と表象としての世界1』がおすすめな人:ニーチェやワーグナーが好きな人、「人はなぜ欲望に振り回されるのか」を考えてみたい人、腰を据えて哲学書に挑戦したい人

性格はまったく違う2冊ですが、どちらも「人の心がどう動くか」に向き合った本という点では共通しています。気になったほうから手に取ってみてください。

なお、10月の新刊(ボルヘス『死と方位磁石』)の紹介はこちらです。

光文社古典新訳文庫10月新刊はボルヘス『死と方位磁石』|収録9編を紹介
2026年10月の光文社古典新訳文庫の新刊は、ボルヘス『死と方位磁石 ボルヘス自選短編集』(寺尾隆吉訳・990円)。推理小説と幻想文学が融合した収録9編の読みどころと、ボルヘス初心者でも楽しめるポイントを紹介します。

まとめ

秋にコーヒーと本を楽しむ様子
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  • 2026年9月の光文社古典新訳文庫の新刊は『万葉集』(佐々木和歌子 編・訳、1,320円)と『意志と表象としての世界1』(ショーペンハウアー著・中山元訳、1,650円)の2点
  • 『万葉集』は約4,500首から350首を厳選。原歌・現代語訳・鑑賞メモ・地図つきで入門に最適
  • 『意志と表象としての世界』は全4巻の新訳。第2巻は2027年1月刊行予定
  • 和歌とドイツ哲学、どちらも「人の心」に向き合う古典

読書の秋、古典新訳文庫で少し背伸びした一冊に挑戦してみてはいかがでしょうか。

佐々木和歌子 編・訳/光文社
¥1,320 (時点)
ショーペンハウアー 著/中山元 訳/光文社
¥1,650 (時点)

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