こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
以前このブログで企業型DCについて取り上げましたが、あれから数ヶ月が経ち、当時「予定」だった改正の施行日や制度の詳細が、より具体的に固まってきました。特に見落とされがちな「退職所得控除の10年ルール」は、前回の記事では触れられていなかった新しい変更点です。今日は、企業型DCまわりの制度改正について、最新情報をアップデートしてお届けします。少し細かい話も含まれますが、知っているかどうかで将来の手取り額が変わる可能性がある内容なので、ぜひ最後まで読んでみてください。下記記事も併せてご確認ください。

企業型DCとiDeCo・DBの基本的な違いについては、下記記事も併せてご確認ください。

おさらい:企業型DCってそもそも何だっけ?
細かい制度改正の話に入る前に、簡単におさらいしておきます。企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、会社が毎月お金を出してくれて、その運用先を自分で選ぶ「自分専用の年金・退職金づくり」の制度です。掛金の運用益には税金がかからず、口座管理手数料も原則として会社負担というメリットがあり、20代のうちから加入している人にとっては「時間を味方につけられる」お得な制度と言えます。仕組みや、iDeCo・DB(確定給付企業年金)との違いについては、冒頭でご紹介した過去記事に詳しくまとめているので、そちらもぜひ参考にしてください。難しく感じても、ポイントを押さえれば決して複雑な制度ではありません。
拠出限度額6.2万円、施行はいつから?

まず整理しておきたいのが、拠出限度額引き上げの正確な施行日です。根拠となる政令(国民年金基金令等の一部を改正する政令)は2025年12月に公布されており、施行日は2026年12月1日と定められています。実務上は、この施行日以降の給与天引き分、つまり2027年1月支払分の掛金から新しい上限(月6.2万円)が適用される見込みです。「2027年から」という理解自体は間違いではありませんが、法律上の施行日は2026年12月1日である点は押さえておきたいポイントです。
iDeCoの加入可能年齢も70歳未満に拡大
同じ2026年12月1日の改正で、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満まで引き上げられます。20代の私たちにとって直接的な影響は薄いかもしれませんが、長く働き続ける前提が広がっているという意味では、老後資金づくりの選択肢が伸びたとも言えます。iDeCoの制度詳細については、下記記事も併せてご確認ください。

【新情報】退職所得控除が「5年→10年ルール」に

ここからが、前回の記事では触れていなかった新しい変更点です。2026年1月1日以降に支給される一時金から、退職所得控除の「重複期間調整ルール」が変わります。
企業型DCやiDeCoの一時金と、会社の退職金を両方受け取る場合、受け取る時期が近すぎると、退職所得控除の非課税枠が重複しないよう調整される仕組みがもともとあります。これまでは「前年以前4年以内」に他の退職金を受け取っていると調整対象になる、通称「5年ルール」でしたが、今回の改正で「前年以前9年以内」に受け取っていると調整対象になる「10年ルール」へと、判定期間が約2倍に延長されます。判定期間が長くなるということは、それだけ非課税枠が調整(縮小)される可能性のある期間も広がるということなので、単純に「ルールが緩くなった」わけではない点に注意が必要です。
受け取る順番で税負担が変わる
ややこしいのが、受け取る順番によって扱いが異なるという点です。DC・iDeCoの一時金を先に受け取り、後から会社の退職金を受け取るケースでは、上記の「10年ルール」が適用されます。一方、会社の退職金を先に受け取り、後からDC・iDeCoを受け取るケースは、従来通り「前年以前19年以内」というより緩やかな基準(変更なし)のままです。
つまり、退職金とDC一時金をどちらから受け取るかという「順番」の設計次第で、将来の手取り額に差が出る可能性があるということです。今すぐ結論を出す必要はありませんが、60歳前後で複数の退職給付を受け取る予定がある人ほど、早いうちからこの仕組みを頭に入れておく価値があります。定年延長や再雇用が一般的になりつつある今、退職金を受け取るタイミング自体も昔より柔軟になっているため、この「順番」の選択肢は今後さらに重要になっていきそうです。
転職の多い20代に関係大――「自動移換」の手続きが変わる

もうひとつ、20代にとって実は身近なのが「自動移換」まわりの手続き見直しです。企業型DCに加入していた人が転職・退職をした際、6ヶ月以内に移換の手続きをしないと、資産が自動的に国民年金基金連合会へ移されてしまう仕組みがあります。この「自動移換」状態になると運用が止まったまま手数料だけが差し引かれ続け、知らないうちに資産が目減りしてしまうケースが少なくありません。
今回の見直しでは、退職前の段階から手続きについて分かりやすく説明・通知するタイミングが整理され、自動移換に陥る人を減らす方向で制度が調整されています。転職が珍しくない20代にとっては、「気づいたら自動移換されていた」という事態を避けるための後押しになりそうです。
実際のところ、転職直後は新しい職場への対応で手一杯になり、企業型DCの資産移換手続きは後回しにされがちです。しかし自動移換されてしまうと、その間の資産は運用されないまま塩漬けになり、さらに管理手数料だけが毎月差し引かれ続けます。半年、1年と気づかずに放置してしまうと、それだけで数千円〜数万円単位の目減りにつながることもあります。転職が決まった時点で、退職前の説明資料に目を通し、次の勤務先の企業型DCへ資産を移すのか、あるいはiDeCoへ移すのかを早めに決めておくと安心です。
20代が今からやっておきたいこと
- マッチング拠出の上限拡大に備える:2026年4月からの制限撤廃で、自分の意思で拠出できる金額が増えます。家計に余裕が出てきたタイミングで見直しを検討しましょう
- 転職時は資産の移換手続きを後回しにしない:自動移換されると運用が止まり手数料だけが引かれ続けます。転職が決まったら早めに手続きを済ませましょう
- 退職所得控除の「受け取り順」は知識として持っておく:今すぐ決める必要はありませんが、将来設計の選択肢として頭の片隅に置いておくと、いざというときに慌てずに済みます
新NISAの制度改正とあわせて、こうした年金・退職給付まわりの制度も同時並行で変わっていっています。非課税制度全体をバランスよく使いこなしていくために、下記記事も併せてご確認ください。

よくある疑問Q&A
Q. 拠出限度額が上がったら、必ず多く拠出しないといけない?
A. いいえ、上限が上がるだけで、拠出額を増やすかどうかは任意です。マッチング拠出で自分の給料から上乗せする場合も、家計に無理のない範囲で金額を決めれば問題ありません。まずは上限額を把握したうえで、生活防衛資金や新NISAとのバランスを見ながら検討するのがおすすめです。無理に上限いっぱいまで拠出して手元の生活資金が窮屈になってしまっては本末転倒です。
Q. 退職所得控除の「10年ルール」は、今20代の自分には関係ない?
A. 直接影響するのは60歳前後で退職給付を受け取るタイミングなので、今すぐ行動が必要なわけではありません。ただし、ルールが変わったこと自体を知らずに数十年後を迎えると、いざ受け取る段階で慌てることになりかねません。「そういう仕組みがある」と頭の片隅に置いておくだけでも十分価値があります。制度は今後も見直される可能性があるので、節目節目で最新情報を確認する習慣をつけておくと安心です。
Q. 会社に企業型DCがあるかどうか、どこで確認できる?
A. 入社時に配布される「確定拠出年金制度のご案内」といった資料や、人事・総務部門への確認が確実です。制度がある場合は、専用のWeb管理画面(レコードキーパーのサイト)にログインできるはずなので、そこから加入状況や現在の運用商品を確認できます。給与明細に「確定拠出年金掛金」のような項目が記載されていないか、あわせてチェックしてみるのもよいでしょう。
まとめ
- 拠出限度額6.2万円への引き上げは2026年12月1日施行、実務上は2027年1月支払分から適用
- iDeCoの加入可能年齢も同時に70歳未満へ拡大
- 退職所得控除の重複期間判定が「5年ルール」から「10年ルール」に延長(2026年1月1日以降支給分から)
- 退職金とDC一時金は受け取る順番によって税負担の扱いが異なる
- 転職時の「自動移換」を防ぐための手続き案内も改善される見込み
制度改正は一度にすべてを覚える必要はありません。ただ、「いつから」「何が」変わるのかをその都度アップデートしておくだけで、いざというときの判断がぐっと楽になります。このブログでも、今後動きがあれば引き続き追いかけていきます。気になる点があれば、まずは自社の企業型DCの案内資料を引っ張り出して、現状を確認するところから始めてみてください。関連記事もぜひあわせてチェックしてみてくださいね。

