ブルーバックス2026年9月新刊3冊|細胞の会話・不老長寿・温度センサー

Close-up of a bookshelf showcasing various academic and literature books in a home library. 本
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こんにちは。風読珈琲店のカエデです。

理系の最前線を、専門家が一般読者向けにかみくだいて書いてくれる講談社ブルーバックス。新書サイズで持ち歩きやすく、通勤電車やカフェでの読書にちょうどいいシリーズです。文系出身の私でも「ちょっと賢くなった気分」を味わえるので、毎月の新刊チェックが密かな楽しみになっています。

今回は、2026年9月17日(木)発売のブルーバックス新刊3冊を、講談社の公式情報をもとに紹介します。体の中で細胞どうしが交わす「会話」、タケやクラゲが手にした「不老長寿」、そしてトウガラシが熱くミントが冷たい理由を解き明かす「温度センサー」。今月はそろって生命科学のテーマが並びました。


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2026年9月のブルーバックス 新刊ラインナップ一覧

まずは3冊の全体像から。紙版の発売日はいずれも2026年9月17日(電子版は9月16日)、価格は講談社公式サイト記載の定価(税込)です。通巻番号順に並べています。

  • 会話する細胞:細胞と臓器はどのように情報を伝え合うのか(石川香 著/B2340/320ページ/1,430円)
  • 不老長寿の進化学:我々はなぜ「死」を選んだのか(山田俊弘 著/B2341/272ページ/1,430円)
  • 生命にとって温度とは何か:生存戦略のカギを握る温度センサーのはたらき(富永真琴 著/B2342/208ページ/1,320円)

ミクロな細胞内の情報伝達から、数千年を生きる生物の進化、ノーベル賞につながった温度受容の研究まで。3冊とも「生きているとはどういうことか」を別の角度から照らしてくれるラインナップです。以下、1冊ずつ見ていきます。

『会話する細胞』石川香|体の中は情報伝達であふれている

Microscopic image showcasing the intricate structure and texture of plant cells.
Photo by turek on Pexels

著者の石川香さんは筑波大学生命環境系の准教授で、専門はミトコンドリアの生物学。日本学術振興会特別研究員、武田薬品工業の研究員を経て大学に戻られた経歴の持ち主で、基礎研究と創薬の両方の現場を知る研究者です。

手を動かそうと思ったとき、脳からの信号は神経細胞を通って筋肉細胞へ届きます。でも本書が注目するのは、それだけではありません。私たちが意識していなくても、体の中では細胞や臓器がたえず情報を交換し合い、全体のバランスを保っている。免疫細胞どうしの連携も、細胞の内側を行き交う伝達物質も、いわば「会話」なのだ――という視点で人体の不思議に迫る一冊です。

「ひとりごと」から「他人との会話」まで、距離で分けた章立て

  • 第1章 細胞のひとりごと:ひとつの細胞の内側で起きている情報伝達
  • 第2章 ご近所との会話:隣り合う細胞どうしのメッセージのやりとり
  • 第3章 遠方との会話:血液を通じた臓器間のやりとり、免疫細胞、腸内細菌、がん細胞との情報交換、性ホルモンまで
  • 第4章 他人との会話:受精と着床、胎盤を通じた母と胎児のコミュニケーション

「ひとりごと→ご近所→遠方→他人」と、会話の距離がだんだん広がっていく構成がとても親しみやすいですね。特に第4章の「母と胎児の会話」は、自分の体とは別の存在である胎児を、母体がどうやって受け入れているのかという話。結婚して家族について考える機会が増えた身としては、つい気になってしまうテーマです。

320ページと今月いちばんのボリュームですが、腸内細菌やがんなど、ニュースや健康情報でよく目にする話題が多く含まれています。断片的に聞いていた知識が「情報伝達」という1本の軸でつながる感覚を味わえそうです。

  • こんな人に:高校生物をもう一度ちゃんと学び直したい人、腸内細菌や免疫の話が好きな人
  • 読みどころ:細胞内から母子間まで、人体の「コミュニケーション」を一望できる構成

『不老長寿の進化学』山田俊弘|なぜヒトは「死」を選んだのか

Captivating close-up of jellyfish showcasing their delicate translucent structure.
Photo by 江门 江 on Pexels

著者の山田俊弘さんは広島大学大学院統合生命科学研究科教授・総合科学部長。生物多様性と熱帯林保護を研究テーマに、熱帯林に何度も足を運んできた生態学者です。講談社からは『〈正義〉の生物学』『〈絶望〉の生態学』などの著書もあり、タイトルからして刺激的な問いの立て方をされる方です。

120年に一度だけ咲くタケ、7000歳のサンゴ、若返るクラゲ――。地球上には、体を更新し続けながら悠久の時を生きる「不老長寿生物」がたくさんいます。では、体が変わり続けるなら「私」の本体はどこにあるのか。そして、なぜヒトは同じように不老長寿へと進化しなかったのか。本書は、死と寿命の存在意義を進化学の視点から解き明かそうとします。

タケ、クラゲ、単為生殖――目次から見える読みどころ

  • 「寿命」を捨てた植物の謎:咲かないタケが咲いたとき、何が起きるのか
  • ゆらぐ個体の境界線:「私以外私じゃない」のか――どこまでが1個体なのかという問い
  • 分身の術で不老長寿:単為生殖による究極の若返り
  • 多様性は必要なのか:永遠の命と引き換えに失われたもの
  • 寿命の存在意義:細胞の限界と個体の死、そして「我々はなぜ死を選んだのか」

章タイトルにさりげなくヒット曲の歌詞が入っていたりして、ブルーバックスらしい遊び心も感じます。「不老長寿」と聞くとアンチエイジングの話を想像しがちですが、本書の焦点はむしろ逆。永遠に生きることで失われるもの、つまり多様性と進化の可能性に目を向けています。

投資の世界でも「分散」が大事だとよく言われますが、生物にとっての多様性もある意味で「将来の不確実性への備え」なのかもしれません。死があるからこそ世代が入れ替わり、変化に適応できる――そんな視点で読むと、少し前向きな気持ちで「寿命」を考えられそうです。

  • こんな人に:生き物の不思議な生態が好きな人、「死」や「自分」について哲学的に考えたい人
  • 読みどころ:身近な不老長寿生物から、死の進化的な意義を逆算していく発想

『生命にとって温度とは何か』富永真琴|ノーベル賞研究の裏側を第一人者が語る

Close-up of a fresh, abundant pile of green chilies, highlighting their spicy and organic nature.
Photo by Engin Akyurt on Pexels

著者の富永真琴さんは、生理学研究所・総合研究大学院大学の名誉教授で、現在は名古屋市立大学の特任教授。循環器内科医を経て研究の道へ進み、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の博士研究員時代に、カプサイシン受容体TRPV1の遺伝子クローニングと機能解析に携わった方です。2026年には井上春成賞を受賞されています。

2021年のノーベル生理学・医学賞のテーマは「温度と触覚の受容体の発見」。本書は、その成果に大きく貢献し、温度受容研究の最前線を走ってきた科学者自身が「温度のふしぎ」を語りつくす一冊です。私たちがお風呂の心地よい温かさから、痛いほどの熱さ・冷たさまでを感じ分けられるのは、「温度感受性TRPチャネル」と呼ばれる細胞の温度センサーのおかげなのだそうです。

トウガラシはなぜ「熱い」のか――身近な疑問から最先端へ

  • トウガラシが熱く、ミントが冷たい理由:辛さや清涼感と温度センサーの意外な関係
  • 動物たちの仰天の能力:0.003℃の変化を「視る」ヘビなど、温度を使った生存戦略
  • 分子の営みから医療まで:目に見えない温度センサーのはたらきと、がんなどの治療との関わり

激辛料理を食べて「熱い!」と感じるのも、ミントのガムで口がスースーするのも、実は温度センサーが関わっているというのは驚きです。カフェ巡りが趣味の私としては、熱いコーヒーを「おいしい温度」と感じる仕組みにもつい思いを巡らせてしまいます。

208ページと3冊の中ではいちばんコンパクトなので、ブルーバックスを初めて手に取る人にもおすすめしやすい一冊。ノーベル賞研究の「裏側」を当事者の言葉で読めるのも大きな魅力です。

  • こんな人に:辛いものや食の科学が好きな人、ノーベル賞研究に興味がある人
  • 読みどころ:身近な「熱い・冷たい」を入り口に、分子レベルの最先端研究へ

3冊に共通するテーマと、読む順番のおすすめ

今月の3冊は、いずれも「生命」を扱いながら、見ているスケールがそれぞれ違うのが面白いところです。

  • 分子・細胞のスケール:『生命にとって温度とは何か』は、細胞膜にある温度センサーという分子レベルの話が中心
  • 個体のスケール:『会話する細胞』は、細胞どうし・臓器どうしが連携してひとつの体を保つしくみ
  • 進化のスケール:『不老長寿の進化学』は、何千年・何世代という時間軸で「寿命」と「死」を考える

読む順番に迷ったら、コンパクトで身近な話題から入れる『生命にとって温度とは何か』→『会話する細胞』→『不老長寿の進化学』と、ミクロからマクロへ視野を広げていく流れがおすすめです。3冊を通して読めば、分子から進化まで、生命科学の「縦の広がり」を一気に体感できます。

同じ9月に刊行された講談社選書メチエの新刊も紹介しています。科学史好きの方は、こちらもあわせてどうぞ。

講談社選書メチエ2026年9月新刊2冊|トンデモと科学・近代日本陶芸史
2026年9月10日発売の講談社選書メチエ2冊を紹介。物理学者がアリストテレスから生成AIまで科学の裏側をたどる『トンデモと科学のあいだ』、魯山人や永仁の壺から陶芸の百年を読み解く『近代日本陶芸史』の内容・価格・読みどころをまとめました。

10月発売予定のブルーバックス新刊2冊もまとめています。あわせてどうぞ。

ブルーバックス2026年10月新刊2冊|ウイルス生態学とシュレディンガー方程式
2026年10月22日発売予定の講談社ブルーバックス新刊2冊を紹介。バクテリオファージから地球生命の支配者に迫る『世界はウイルスでできている』、高校数学で量子力学の核心に挑む『高校数学でわかるシュレディンガー方程式<新装版>』の内容・価格・読みどころをまとめました。

ブルーバックスの既刊・新刊情報は、講談社の公式レーベルページで確認できます。

ブルーバックス作品一覧|講談社
ブルーバックスの作品をご紹介します。

まとめ

  • 2026年9月のブルーバックスは9月17日発売の3冊(電子版は9月16日)
  • 細胞生物学:『会話する細胞』――細胞内から母子間まで、体の中の「会話」をたどる
  • 進化学:『不老長寿の進化学』――タケやクラゲから、ヒトが「死」を選んだ理由に迫る
  • 生理学:『生命にとって温度とは何か』――ノーベル賞につながった温度センサー研究を第一人者が解説

今月はそろって生命科学がテーマの3冊。どれも身近な疑問から最先端の研究へ連れて行ってくれる、ブルーバックスらしいラインナップです。秋の夜長、温かいコーヒーを片手に「生きていること」の不思議に浸ってみてはいかがでしょうか。それでは、また風読珈琲店でお会いしましょう。

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