こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
ちくま学芸文庫は、品切れになっていた名著や専門書を文庫で復活させてくれる、本好きにはありがたいシリーズです。少しお値段は張りますが、そのぶん「一生ものの一冊」に出会える確率が高いと感じています。
今回は2026年11月10日刊行のちくま学芸文庫5冊を、筑摩書房の公式情報をもとに紹介します。オスマン帝国の衰亡、「書く」ことの心理学、人類学の150年、ヌーヴォー・ロマンの小説論、そして戦後短歌史。歴史から文学まで、今月も硬派なラインナップです。
200万冊が読み放題となるKindle unlimitedへの登録はこちらから!
大学生なら6カ月無料体験可能!Prime Studentへの登録はこちらから!
2026年11月のちくま学芸文庫 新刊ラインナップ一覧
刊行日はいずれも2026年11月10日(筑摩書房公式サイトの記載。書店店頭に並ぶのは数日後になることがあります)。価格は税込の定価です。
- オスマン帝国衰亡史(アラン・パーマー 著/白須英子 訳/544ページ/1,980円)
- 増補 なぜ人は書くのか(茂呂雄二 著/352ページ/1,650円)
- 増補 人類学的思考の歴史(竹沢尚一郎 著/576ページ/1,980円)
- 新しい小説のために 付スナップ・ショット(アラン・ロブ=グリエ 著/平岡篤頼 訳/352ページ/1,650円)
- 黒衣の短歌史〔増補決定版〕(中井英夫 著/656ページ/2,090円)
5冊中3冊が500ページを超える大ボリューム。じっくり腰を据えて読みたい本がそろいました。
『オスマン帝国衰亡史』アラン・パーマー|三大陸の大帝国はいかにして滅んだか

世界の交差点コンスタンティノープルを擁して三大陸に覇をとなえ、欧州列強を震撼させた大帝国は、いかにして滅亡したのか――。イギリスの歴史家アラン・パーマーが、オスマン帝国の衰退の歴史を追う一冊です。翻訳は白須英子さんです。
オスマン帝国というと、1453年のコンスタンティノープル征服やスレイマン1世の最盛期が教科書でおなじみですが、本書が焦点を当てるのは「衰亡」の側。600年以上続いた帝国が、ヨーロッパ列強との関係の中で少しずつ力を失い、第一次世界大戦後に消えていくまでの長い過程です。
いまの中東やバルカン半島の国境線の多くは、この帝国の解体と深く関わっています。ニュースで見る地域の背景を知るうえでも、544ページを読む価値がありそうです。
- こんな人に:世界史が好きな人、中東・バルカン情勢の歴史的背景を知りたい人
『増補 なぜ人は書くのか』茂呂雄二|「書く」という行為を心理学から問う

「書く」とはどういう行為か。本書は、ことばが成立する状況や場、人々のやりとりを軸に書くことを考察する心理学の本です。著者の茂呂雄二さんは心理学者。文庫化にあたり、今後の心理学と認知科学に向けた論考も増補されています。
書くことを「頭の中にある考えを文字にする作業」とだけ捉えるのではなく、誰に向けて、どんな場で書くのかという「やりとり」から捉え直す視点は、ブログを書いている身としてとても気になります。読者を想定して記事を書くとき、自分の中で何が起きているのか――そんな問いへのヒントがありそうです。
- こんな人に:文章を書くことが仕事・趣味の人、心理学や認知科学に関心がある人
『増補 人類学的思考の歴史』竹沢尚一郎|150年の歩みを一望する
人類学は何を問うてきたのか。著者の竹沢尚一郎さんは文化人類学者。本書は近代人類学の誕生から現在まで、150年にも及ぶ歩みを一望し、人類学のあるべき姿を見定めようとする一冊です。文庫化にあたり増補改訂されています。
「異文化を理解する」とはどういうことか。人類学の歴史は、その問いをめぐる試行錯誤の歴史でもあります。576ページと分厚いですが、学説史を通して学問の全体像をつかめるのは、こうした通史ならではの魅力です。
- こんな人に:文化人類学の全体像をつかみたい人、レヴィ=ストロースなどの名前は知っているけれど流れがわからない人
『新しい小説のために』ロブ=グリエ|ヌーヴォー・ロマンの旗手による小説論

アラン・ロブ=グリエは、1950〜60年代のフランスで登場した「ヌーヴォー・ロマン(新しい小説)」の旗手。本書は、過去の形式を脱却し、新しい書き方(エクリチュール)を探究せよと唱えたラディカルな小説論に、短編集『スナップ・ショット』を併せた一冊です。訳は平岡篤頼さん、解説は詩人・作家の松浦寿輝さん。
登場人物の心理やストーリーを丁寧に描く「普通の小説」の約束事そのものを疑う――。理論と実作を一冊で読めるので、主張がどう作品になるのかを確かめられるのがうれしいところ。小説を読むのは好きだけれど、「小説とは何か」を考えたことはなかったという人にこそ刺激になりそうです。
- こんな人に:フランス文学や現代小説の理論に興味がある人、実験的な小説が好きな人
『黒衣の短歌史〔増補決定版〕』中井英夫|名編集者が見た戦後短歌
中井英夫といえば、推理小説の「三大奇書」の一つに数えられる『虚無への供物』の作者。しかし彼は、きらめく新人を輩出し戦後短歌の一時代を築いた名編集者でもありました。短歌雑誌の編集者として、中城ふみ子や寺山修司、塚本邦雄らを世に送り出したことで知られます。
本書は、その中井による回顧録的な戦後歌壇史に、歌論などを増補した完全版。解説は歌人の穂村弘さんです。656ページの大著ですが、寺山修司のデビューの舞台裏など、短歌に詳しくなくても名前を知っている人物が登場するのは楽しみなところ。小説家・中井英夫のファンにも見逃せない一冊です。
- こんな人に:短歌や寺山修司が好きな人、『虚無への供物』の作者の別の顔を知りたい人
今月の5冊をどう選ぶか
- 歴史派:『オスマン帝国衰亡史』で、大帝国の長い黄昏をたどる
- 学問の全体像をつかみたい:『増補 人類学的思考の歴史』
- ことば・文学が好き:『なぜ人は書くのか』『新しい小説のために』『黒衣の短歌史』の3冊は、「書くこと」をめぐる読み比べとしても面白い
10月のちくま学芸文庫の新刊も紹介しています。あわせてどうぞ。

刊行情報の詳細は、筑摩書房のちくま学芸文庫のページで確認できます。

まとめ
- 2026年11月のちくま学芸文庫は11月10日刊行の5冊
- 歴史:『オスマン帝国衰亡史』――三大陸の大帝国の衰退
- 心理学:『増補 なぜ人は書くのか』――「書く」をやりとりから考える
- 人類学:『増補 人類学的思考の歴史』――150年の歩みを一望
- 文学:『新しい小説のために』『黒衣の短歌史〔増補決定版〕』――小説論と戦後短歌史
どれも文庫としては厚めですが、長く手元に置いておきたくなる5冊です。冬の読書計画にぜひ加えてみてください。それでは、また風読珈琲店でお会いしましょう。
200万冊が読み放題となるKindle unlimitedへの登録はこちらから!
大学生なら6カ月無料体験可能!Prime Studentへの登録はこちらから!

