こんにちは。風読珈琲店のカエデです。日本経済新聞の報道で、2026年4〜6月期の外貨預金残高が過去最大の伸びを記録したというニュースを見ました。「円だけに資産を置いておくのは不安」という空気が、統計にもはっきり表れてきた形です。
ただ、外貨預金は「金利が高いから」「円安が進みそうだから」というイメージだけで始めると、思わぬ落とし穴にはまりやすい商品でもあります。今日はニュースの中身を整理しつつ、実際に始める前に知っておきたい注意点をまとめます。
外貨預金、過去最大の伸びに

日本経済新聞が報じた日銀調査によると、今回のニュースのポイントは次のとおりです。
- 対象期間:2026年4〜6月期
- 伸び幅:外貨預金の平均残高が前年同期から約4兆円増加し、過去最大の伸びを記録
- 期末残高:国内銀行の外貨預金残高は約26兆1,000億円と、前年同期より18%増加
- 背景:円の先安観から、家計・企業ともに資産を円だけに集中させず分散させる動きが広がっている
わずか1年で残高が4兆円も積み上がったというのは、統計としてもかなりインパクトのある数字です。
なぜ今、外貨預金が増えているのか
背景にあるのは、円安局面が長期化するという見方です。2025年後半にかけては1ドル157円台まで円安が進む場面もあり、日米の金利差が大きく縮まりにくいという構造的な要因から、2026年に入っても円安圧力が続くとの見方が根強くあります。「これ以上円の価値が下がる前に、資産の一部を外貨に置き換えておきたい」という心理が、外貨預金の増加という形で表れていると言えそうです。
一方で見逃せないのが、この動き自体が新たな円安要因になりうるという指摘です。家計や企業が円を売って外貨を買う動きが広がれば、それ自体が為替市場での円売り圧力になります。「円安が不安だから外貨を買う」→「外貨を買う動きが円安をさらに進める」という循環が起きているとすれば、少し皮肉な話です。
もう一つの誘因が金利です。米ドルなど主要外貨の預金金利は、超低金利が続く円預金と比べるとかなり高めに設定されている銀行が多く、「同じ預けるなら金利が高いほうへ」という発想が働きやすくなっています。ただし、この金利の高さだけを見て判断すると、次に説明する為替手数料や為替変動のリスクを見落としがちになる点には注意が必要です。
注意点① 為替手数料が想像以上に高い

外貨預金でもっとも見落とされがちなのが為替手数料(為替スプレッド)です。円を外貨に換えるとき、外貨を円に戻すときの両方で、金融機関ごとに定められた手数料がかかります。
- メガバンク:三菱UFJ銀行は1米ドルあたり片道1円、三井住友銀行は片道2円が目安(いずれも往復ではこの倍)
- ネット銀行:ドコモSMTBネット銀行やGMOあおぞらネット銀行などは1米ドルあたり片道4〜6銭程度と、メガバンクの数十分の一の水準
メガバンクの窓口や通常サービスで1万ドル(約150万円)を円→ドル→円と往復させた場合、片道2円の手数料だと往復で2万円前後がコストとして消えてしまいます。「金利が年2%つく」と言われても、往復の為替手数料だけでその大半が相殺されてしまうケースは珍しくありません。金利の高さだけでなく、為替手数料の水準もあわせて確認することが欠かせません。
具体的な金額でシミュレーションしてみます。100万円(1ドル=150円換算で約6,667ドル)を米ドルに換えて、1年後に同じレートで円に戻すケースを考えます。
- メガバンク(片道2円/ドルの場合):往復4円×6,667ドル=約26,700円が為替手数料として発生
- ネット銀行(片道5銭/ドルの場合):往復10銭×6,667ドル=約670円が為替手数料として発生
同じ100万円を動かすだけで、選ぶ銀行によって手数料に2万6,000円ほどの差、率にして40倍近い開きが出る計算になります。もちろん為替レートが変動すれば話は別ですが、少なくとも「どの銀行の外貨預金を使うか」で結果が大きく変わることは押さえておきたいポイントです。私自身の個人口座であるドコモSMTBネット銀行も、こうした為替手数料が低めに設定されている銀行の一つです。もし外貨預金をするなら、普段使っている銀行の為替手数料がどのくらいか、一度確認しておいて損はないと思います。
注意点② 円換算では元本割れすることがある
外貨預金は「外貨ベース」では元本が保証されるのが基本ですが、これはあくまで預けた外貨の金額が減らないという意味です。円に戻すときの為替レートが、預け入れたときより円高に振れていれば、円換算では元本を下回る「元本割れ」が起こります。
「円安が進みそうだから」という理由だけで始めると、実際に円高方向に動いたときに含み損を抱えたまま長期間塩漬けにしてしまう、というのはよくある失敗パターンです。相場が反転したときに慌てて売却してしまうと、為替差損に加えて往復の為替手数料も二重に負担することになり、傷口をさらに広げてしまいかねません。
注意点③ 預金保険制度の対象外
円建ての普通預金・定期預金は、金融機関が破綻した場合でも預金保険制度(ペイオフ)によって元本1,000万円までとその利息が保護されます。しかし外貨預金は預金保険制度の対象外です。預け先の金融機関が破綻した場合、円預金のような保護は受けられません。日本国内で営業する銀行はいずれも健全性の規制を受けていますが、「円預金と同じ感覚で全額安全」とは考えないほうがよい商品だということは、頭の片隅に置いておきたいポイントです。
注意点④ 為替差益は雑所得、総合課税で確定申告が必要

外貨預金の利息は、円預金と同じく20.315%の源泉分離課税で完結します。ところが、預け入れ時より円安のタイミングで引き出して得た為替差益は「雑所得」として総合課税の対象になります。給与所得など他の所得と合算して税額が計算されるため、所得が高い人ほど税率も上がる累進課税です。
- 給与所得者の場合、給与以外の所得(為替差益を含む)が年間20万円を超えると確定申告が必要
- NISA(少額投資非課税制度)の対象外のため、非課税のメリットは受けられない
- 証券会社が損益を計算してくれる株式投資などと違い、為替差益は基本的に自分で計算・申告する必要がある
例えば、1ドル140円のときに100万円(約7,143ドル)を外貨預金し、1ドル155円のときに円に戻したとします。円換算額は約110万7,000円となり、為替差益は約10万7,000円です。この差益は給与所得などと合算され、総合課税の税率(所得税+住民税)がそのままかかってきます。株式投資の利益であれば申告分離課税で税率が一律20.315%に抑えられるのに対し、外貨預金の為替差益は所得が多い人ほど税負担が重くなる仕組みになっている点は、意外と知られていません。
税金の計算・申告の手間という点では、証券会社が損益通算や申告分離課税を代行してくれる外貨建てMMFのほうがシンプルです。両者の違いは以前の記事で詳しく比較しているので、あわせてご確認ください。

注意点⑤ 満期・解約のタイミング管理を忘れずに
外貨定期預金は、満期日に手続きをしないと自動的に外貨のまま同条件で更新される商品が少なくありません。「気づいたら円高が進んでいたのに、満期の手続きを忘れて為替リスクにさらされ続けていた」という状況も起こり得ます。満期日や自動更新の条件は、預け入れ時にきちんと確認し、カレンダーやリマインダーで管理しておくと安心です。特に金利の高さに惹かれてキャンペーン金利で預け入れた場合、更新後は優遇金利が外れて通常金利に戻ることも多いため、更新のたびに条件を見直す習慣をつけておくとよいでしょう。
それでも外貨預金をするなら
注意点を踏まえたうえで、それでも外貨預金を検討したい場合は、次のような点を意識すると失敗しにくくなります。
- 生活防衛資金や近い将来使う予定のお金ではなく、当面使う予定のない余裕資金で行う
- 為替手数料の低いネット銀行を比較したうえで選ぶ
- 一度にまとめて預けず、時期を分けて複数回に分けることで為替タイミングのリスクを分散する
- 為替差益にかかる税金や確定申告の要否を、事前に把握しておく
また、円安・為替分散という目的だけであれば、外貨預金以外にも外貨建てMMFや、以前紹介したウィブル証券のような為替手数料の低い証券会社を使った米国株投資など、選択肢はいくつかあります。それぞれ元本保証の有無・流動性・税金の扱いが異なるので、目的に合わせて比較してみてください。

まとめ
- 2026年4〜6月期、外貨預金の平均残高は前年同期比で約4兆円増加し、過去最大の伸びを記録(期末残高は約26兆1,000億円、前年比+18%)
- 背景には円の先安観による資産分散の動きがあり、その動き自体が新たな円安圧力にもなっている
- 為替手数料はメガバンクとネット銀行で数十倍の差があり、金利の高さだけで判断すると損をしやすい
- 円換算では元本割れのリスクがあり、預金保険制度の対象外という点も円預金との大きな違い
- 為替差益は雑所得として総合課税、確定申告が必要になる場合がある
「円だけに資産を置いておくのは不安」という気持ちは自然なものですが、外貨預金は仕組みとコストを理解したうえで、余裕資金の範囲で少しずつ試すのが安全な付き合い方だと思います。金利の高さという「入口」だけでなく、為替手数料・税金・保護の有無という「出口」までセットで確認しておくことが、結果的に一番のリスク管理になります。
ニュースになるくらい多くの人が動いているタイミングだからこそ、「みんなやっているから」ではなく、自分の家計にとって本当に必要な分散なのかを一度立ち止まって考えてみたいところです。

