こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
「次に読む本、何にしよう?」と書店で迷ったとき、カエデがつい手に取ってしまうのが本屋大賞の受賞作とノミネート作です。全国の書店員さんが「いちばん売りたい本」を投票で選ぶ賞なので、ハズレが少なく、読書の秋の一冊選びにはぴったりなんですよね。
2026年4月9日に発表された2026年本屋大賞は、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』が大賞を受賞しました。この記事では、大賞作に加えて、2位から10位までのノミネート全10作品を、順位・得点つきで紹介します。気になる一冊を見つける参考にしてみてください。
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2026年本屋大賞とは?

本屋大賞は、新刊書店で働く書店員さんの投票だけで選ばれる文学賞です。「売り場からベストセラーをつくる」をコンセプトに2004年に始まり、今回で第23回を迎えました。作家や評論家が選ぶ芥川賞・直木賞とは違い、読者にいちばん近い場所にいる書店員さんが「この本を売りたい」と推した作品が選ばれるのが特徴です。
- 対象作品:2024年12月1日〜2025年11月30日に刊行された日本の小説
- 一次投票:2026年は490書店・698名の書店員さんが参加し、上位10作品がノミネート作に(2026年2月6日発表)
- 二次投票:ノミネート全作を読んだ書店員さんが、ベスト3に順位をつけて投票
- 大賞発表:2026年4月9日(木)、東京・明治記念館で発表会を開催
「全作品を読んだうえで投票する」というルールがあるので、上位作は書店員さんたちの読み比べを勝ち抜いた作品ばかり。翻訳小説部門や発掘部門などもありますが、この記事ではメインの大賞と、そのノミネート作に絞って紹介します。
2026年本屋大賞の結果一覧(ノミネート10作品)
まずは順位と得点を一覧で。大賞と2位の差は32.5点、2位と3位は15点差と、上位はかなりの接戦でした。
| 順位 | 作品名 | 著者 | 出版社 | 得点 |
|---|---|---|---|---|
| 大賞 | イン・ザ・メガチャーチ | 朝井リョウ | 日経BP 日本経済新聞出版 | 452 |
| 2位 | 熟柿 | 佐藤正午 | KADOKAWA | 419.5 |
| 3位 | PRIZE―プライズ― | 村山由佳 | 文藝春秋 | 404.5 |
| 4位 | エピクロスの処方箋 | 夏川草介 | 水鈴社 | 372 |
| 5位 | 暁星 | 湊かなえ | 双葉社 | 335 |
| 6位 | 殺し屋の営業術 | 野宮有 | 講談社 | 321 |
| 7位 | ありか | 瀬尾まいこ | 水鈴社 | 229.5 |
| 8位 | 探偵小石は恋しない | 森バジル | 小学館 | 226.5 |
| 9位 | 失われた貌 | 櫻田智也 | 新潮社 | 164 |
| 10位 | さよならジャバウォック | 伊坂幸太郎 | 双葉社 | 131 |
顔ぶれを見ると、直木賞作家の佐藤正午さん・村山由佳さん、本屋大賞の常連である湊かなえさん・瀬尾まいこさん・伊坂幸太郎さんといったベテラン勢に、江戸川乱歩賞受賞作の野宮有さんや森バジルさんといった新しい書き手が並ぶ、バランスのいいラインナップになりました。
大賞『イン・ザ・メガチャーチ』朝井リョウ

2026年本屋大賞に輝いたのは、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP 日本経済新聞出版)です。得点は452点。朝井さんは『何者』で直木賞を受賞した作家ですが、本屋大賞は今回が初受賞です。
あらすじ:ファンダム経済の「仕掛ける側」と「のめり込む側」
物語は3人の視点で進みます。レコード会社に勤め、ある能力を買われてアイドルグループの運営に関わることになった47歳の久保田慶彦。留学を目指しながらも内向的な性格に悩み、ひとりのアイドルに出会う19歳の大学生・武藤澄香。そして、舞台俳優を熱烈に応援していたものの、ある報道で状況が一変する35歳の契約社員・隈川絢子。
ファンダム経済を築く者、のめり込む者、かつてのめり込んでいた者。三者三様の立場から、人の心を動かす“物語”がもたらす光と影が浮かび上がっていきます。
カエデが惹かれたポイント
タイトルの「メガチャーチ」は、数千〜数万人規模の信者を集める巨大教会のこと。推し活やファンコミュニティを、信仰に近い熱量をもつ場所として描こうとしていることが伝わってきます。
カエデ自身、Jリーグのサポーターとしてスタジアムに通い、最近はフィギュアスケートの現地観戦にもハマっているので、“推す”ことの楽しさはよく知っています。だからこそ、その熱がビジネスの仕組みとして設計されている側面を突きつけられると、ドキッとさせられるテーマです。応援する側にも、仕掛ける側にも、どちらにも一方的に肩入れしない視線は、『何者』でSNS時代の就活生を描いた朝井さんらしいところだと思います。
- こんな人におすすめ:推し活をしている人、SNSやファンコミュニティとの距離感に悩んだことがある人
- 読みどころ:立場の違う3人の視点が、ひとつの“物語”の功罪にどう収束していくか
朝井リョウさんの作品は、以前『何者』の書評も書いています。

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2位〜10位のノミネート作品

ここからは、惜しくも大賞を逃したノミネート作品を順に紹介します。どれも書店員さんが推した作品なので、大賞作と合わせて気になるものから手に取ってみてください。
2位『熟柿』佐藤正午(KADOKAWA)
得点419.5点で2位となったのは、『月の満ち欠け』で直木賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞を受賞した佐藤正午さんの最新長編です。
主人公は、人生を踏み外してしまった一人の女性。息子の顔を見たい一心で何か事を起こせば、そのたびにパトカーがやってくる――。そんな自分の姿を息子に見せたくない、産みの母親だと知られるべきではない、という母親の静かな決意が描かれます。タイトルの「熟柿」は、熟した柿が自然に落ちるのを待つように、時機を待つことのたとえ。長い時間をかけて描かれる母と子の物語は、じっくり味わいたい一冊です。
『熟柿』はこちら。
3位『PRIZE―プライズ―』村山由佳(文藝春秋)
3位(404.5点)は、直木賞作家・村山由佳さんによる“作家”小説。
主人公の天羽カインは、本を出せばベストセラー、映像化作品も多数、本屋大賞にも輝いた人気作家。それなのに、直木賞だけが獲れない――。文壇から正当に評価されないことへの怒りを燃料に、何としてでも認めさせようと突き進む姿が描かれます。本屋大賞のノミネート作で「本屋大賞作家が直木賞を渇望する」物語というのがなんとも皮肉で面白いところ。出版業界の内側をのぞけるので、本好きほど楽しめるはずです。
『PRIZE―プライズ―』はこちら。
4位『エピクロスの処方箋』夏川草介(水鈴社)
4位(372点)は、『神様のカルテ』シリーズで知られる現役医師作家・夏川草介さんの作品。2024年本屋大賞4位の『スピノザの診察室』の続編です。
大学病院で難手術を成功させてきた腕を持ちながら、甥のために京都の地域病院で働く内科医・雄町哲郎。ある日、大学准教授から持ち込まれたのは、かつて哲郎が激怒させた大学の絶対権力者・飛良泉教授の父親という難しい症例でした。「治せない病は山のようにあるが、癒せない哀しみはない」という言葉に象徴されるように、医療の限界と、それでも人に寄り添う医師の姿が静かに胸を打ちます。前作から続けて読むのがおすすめです。
『エピクロスの処方箋』はこちら。
5位『暁星』湊かなえ(双葉社)
5位(335点)は、デビュー作『告白』で2009年の本屋大賞を受賞した湊かなえさんの『暁星』。
公式の紹介文は「ただ星を守りたかっただけ。」「フィクションとノンフィクション、2つの物語がつながったときに見える景色とは。」と、ごく短いものです。2つの物語がどう重なっていくのかは、ぜひ予備知識なしで読んで確かめてほしいところ。湊さんらしい構成の妙を味わえそうです。
『暁星』はこちら。
6位『殺し屋の営業術』野宮有(講談社)
6位(321点)は、第71回江戸川乱歩賞を受賞した野宮有さんの『殺し屋の営業術』。
営業成績1位、契約のためなら手段を選ばない凄腕営業マンの鳥井が、深夜のアポイント先で刺殺体を発見。犯人の「殺し屋」に口封じされそうになった鳥井は、「ここで私を殺したら、あなたは必ず後悔します」と語り出します。そう、これは商談なのだ――。武器は銃ではなく、話術・度胸・論理という設定がとにかく痛快。社会人として営業トークの奥深さを感じる場面も多く、仕事帰りに一気読みしたくなるジェットコースター・ミステリーです。
『殺し屋の営業術』はこちら。
7位『ありか』瀬尾まいこ(水鈴社)
7位(229.5点)は、『そして、バトンは渡された』で2019年本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの『ありか』。
母親との関係に悩みながら、一人娘のひかりを大切に育てるシングルマザーの美空。そして、兄と美空が離婚したあとも何かと二人の世話を焼こうとする、同性が好きな義弟の颯斗。血縁や「家族」という枠にとらわれない人と人とのつながりを、瀬尾さんらしいあたたかい筆致で描いた物語です。疲れた日に読むと、そっと支えてくれるような一冊。
『ありか』はこちら。
8位『探偵小石は恋しない』森バジル(小学館)
8位(226.5点)は、森バジルさんの本格ミステリ『探偵小石は恋しない』。
ミステリオタクの探偵・小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日を夢見ているものの、事務所に届く依頼は9割9分が浮気などの色恋調査。ところが事件は、思いもよらないところで起きていて――。「そのひと言で、世界が一変する」という紹介文の通り、驚きの仕掛けが待っているタイプの作品です。軽快な語り口で読みやすく、ミステリ初心者にもすすめやすそうです。
『探偵小石は恋しない』はこちら。
9位『失われた貌』櫻田智也(新潮社)
9位(164点)は、『蟬かえる』で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した櫻田智也さんの『失われた貌』。
山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた身元不明の死体が見つかります。事件報道のあと、警察を訪ねてきた小学生は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は10年前に行方不明になっていました。無関係に見えた出来事が絡み合い、現在と過去を飲み込んでいく、骨太な警察ミステリーです。
『失われた貌』はこちら。
10位『さよならジャバウォック』伊坂幸太郎(双葉社)
10位(131点)は、『ゴールデンスランバー』で2008年本屋大賞を受賞した伊坂幸太郎さんの、デビュー25周年となる書き下ろし長編ミステリー。
「夫は死んだ。死んでいる。私が殺したのだ。」という衝撃的な一文から始まる物語です。タイトルの「ジャバウォック」は『鏡の国のアリス』に登場する怪物の名前。伊坂さんならではの伏線回収を楽しみに読みたい一冊です。
『さよならジャバウォック』はこちら。
本屋大賞ノミネート作の選び方
10作品もあると迷ってしまう…という人向けに、カエデなりの選び方をまとめてみました。
- 話題作をまず読みたい:大賞『イン・ザ・メガチャーチ』。読書会や職場の雑談でも話題にしやすいです
- じっくり心に響く物語が読みたい:『熟柿』『エピクロスの処方箋』『ありか』
- 本や出版業界が好き:『PRIZE―プライズ―』
- ミステリーで一気読みしたい:『殺し屋の営業術』『探偵小石は恋しない』『失われた貌』『さよならジャバウォック』『暁星』
- お気に入り作家から入りたい:過去の本屋大賞受賞作家(湊かなえ・瀬尾まいこ・伊坂幸太郎)の作品から
ノミネート作の多くは単行本なので、1冊2,000円前後とそれなりのお値段です。図書館で予約したり、電子書籍のセールやポイント還元を活用したりすると、気軽に読み比べやすくなります。ただし人気作は図書館の予約待ちが長くなりがちなので、早めの予約がおすすめです。
この秋は文庫フェアも開催中なので、過去の本屋大賞受賞作を文庫で読むのもいいですね。

まとめ
- 2026年本屋大賞の大賞は朝井リョウさん『イン・ザ・メガチャーチ』(452点)。朝井さんは初受賞
- 2位は佐藤正午さん『熟柿』、3位は村山由佳さん『PRIZE―プライズ―』と、上位は僅差の接戦
- ノミネート10作は、人間ドラマから本格ミステリーまでジャンルの幅が広い
- 書店員さんが全作読んだうえで選んだ作品ばかりなので、どれを選んでもハズレが少ない
書店員さんの「売りたい!」が詰まった10冊、読書の秋のお供にぜひ。カエデもカフェで少しずつ読み進めていこうと思います。
大賞作『イン・ザ・メガチャーチ』はこちらから。
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