こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
米国株が大きく下がったときや、「オルカンの純資産がS&P500を抜いた」といったニュースを見たときに、ふと頭をよぎるのが「S&P500からオルカンに乗り換えたほうがいいのかな?」という迷いではないでしょうか。
私も新NISAのつみたて投資枠でS&P500を積み立てているので、この気持ちはよく分かります。ただ、NISAの口座で「売って買い直す」形の乗り換えをすると、非課税枠の仕組み上、思わぬ損をすることがあります。
この記事では、S&P500からオルカンへの乗り換えを考えたときに知っておきたいNISAのルールと、売却せずに済むおすすめの方法を、具体的な数字で解説します。
この記事でわかること
- 乗り換えより「積立先の変更」をおすすめする理由
- NISAで売却したときの非課税枠のルール(翌年・簿価分)
- 売却して乗り換えるなら押さえたい3つの注意点
- S&P500を積み立てている私が乗り換えない理由
結論:売却しなくていい。まずは「積立先だけ変える」で十分

先に結論です。
S&P500からオルカンに寄せたいなら、今持っているS&P500は売らずに、これからの積立先だけオルカンに変えるのが基本
この方法なら、税金もかからず、NISAの非課税枠もムダになりません。時間がたつにつれて、資産全体に占めるオルカンの割合が自然に増えていきます。
一方、今持っているS&P500を売却してオルカンを買い直す「完全な乗り換え」は、NISAの非課税枠のルールや、売ってから買うまでの価格変動を考えると、ほとんどのケースで得になりにくい選択です。
そもそもS&P500とオルカンの違いは何か、を先に整理したい方は下記記事をどうぞ。

乗り換えを考える3つのきっかけ
乗り換えを考えるきっかけは、主に次の3つです。自分がどれに当てはまるかで、取るべき行動が変わります。
① 米国に集中していることが不安になった
S&P500は米国100%です。米国の政治や景気の動きが連日ニュースになると、「1か国に集中していて大丈夫かな」と不安になるのは自然なことです。これは投資方針そのものを見直すきっかけなので、後で紹介する「積立先の変更」を検討する価値があります。
② 株価が下がって怖くなった
2025年の年初から5月14日まではS&P500(eMAXIS Slim 米国株式)が−7.8%、オルカンが−4.0%でした(SBI証券の集計)。こうした下落局面では、「オルカンのほうが下がりにくかった」という比較が目につきます。
ただ、下がったあとに売って乗り換えるのは、安値で売ることになりやすいので要注意です。下落がきっかけなら、まずは乗り換えより「積立を止めずに続けられるか」を考えたほうがいいと思います。
③ オルカンの人気が高まっている
2026年2月27日には、オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))の純資産総額がeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を抜き、国内の公募投資信託(ETFを除く)で最大になったと報じられました。ただ、「みんなが買っているから」は乗り換えの理由になりません。人気は、そのファンドがこれから上がるかどうかとは関係がないからです。

乗り換えの理由が「方針が変わったから」なのか「値動きに不安になったから」なのか。まずここを自分に聞いてみるのがおすすめです。
NISAで売却して乗り換える前に知っておきたい注意点3つ

それでも「今あるS&P500を売ってオルカンに替えたい」という場合は、次の3つを必ず押さえておきましょう。
注意点① 売却した非課税枠が戻るのは「翌年」、しかも「買った金額」分だけ
新NISAでは、保有している商品を売却すると、その分の非課税保有限度額(生涯1,800万円の枠)が翌年に復活します。ポイントは2つです。
- 復活するのは翌年:売った年のうちには戻りません
- 復活するのは「簿価(買ったときの金額)」分:値上がりして売っても、戻るのは買った金額まで
たとえば、100万円分買ったS&P500が150万円に値上がりしていて、それを全部売却した場合、翌年に復活する枠は100万円分です。150万円分ではありません。
「売ってもすぐ枠が戻るから、何度でも入れ替えられる」というわけではない点に注意しましょう。
注意点② 買い直すと、その年の年間投資枠を使ってしまう
もうひとつ見落としがちなのが、年間投資枠は売却しても復活しないことです。新NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円(合計360万円)です。
S&P500を売った売却代金でオルカンを買い直すと、その買い直し分はその年の年間投資枠を使います。つまり、
- つみたて投資枠だけで買い直す場合:1年に買い直せるのは最大120万円まで。しかも、その年の新しい積立に使うはずだった枠を食ってしまう
- 成長投資枠も使う場合:オルカンは成長投資枠でも買えるので、合計で年360万円まで買い直せる。ただし、成長投資枠で使える生涯の上限は1,200万円まで
残高が大きいほど、一度に全部を乗り換えることはできず、年間投資枠の範囲で数年がかりになると考えておきましょう。
注意点③ 売ってから買うまでの間に、価格が動く
投資信託は、注文してから約定・受け渡しまでに数営業日かかります。S&P500を売って、その代金でオルカンを買うまでの間、お金が一時的に市場の外に出ている状態になります。
その間に株価が大きく上がれば、安く売って高く買い直すことになります。S&P500とオルカンは中身の6割強が同じ米国株なので、どちらかだけが大きく上がることは少ないものの、「一度市場から離れる」リスクは残ります。
なお、NISAではなく課税口座(特定口座など)で乗り換える場合は、売却益に約20%(20.315%)の税金がかかります。含み益が大きいほど税金も大きくなるので、課税口座での乗り換えは特に慎重に考えましょう。
おすすめは「持っている分はそのまま、積立先だけ変える」
ここまでの注意点を踏まえると、S&P500からオルカンに寄せたい場合の一番の方法は、今持っているS&P500はそのまま持ち続けて、毎月の積立先だけをオルカンに変えることです。
- 税金がかからない:売却しないので、課税口座でも利益が確定しない
- 非課税枠がムダにならない:年間投資枠は新しい積立にだけ使う
- 市場から離れる期間がない:ずっと投資を続けたまま、配分だけが少しずつ変わる
- 設定の変更だけで完了:証券会社の積立設定で商品を変えるだけ
積立先を変えると、米国比率はどう変わる?
たとえば、S&P500を100万円持っている人が、積立先を月2万円のオルカンに変えたとします。値動きがないと仮定すると、全体の米国比率は次のように下がっていきます(オルカンの米国比率は62.8%で計算)。
| 時点 | S&P500 | オルカン | 全体の米国比率 |
|---|---|---|---|
| 積立先を変えた直後 | 100万円 | 0円 | 100% |
| 1年後 | 100万円 | 24万円 | 約92.8% |
| 3年後 | 100万円 | 72万円 | 約84.4% |
| 5年後 | 100万円 | 120万円 | 約79.7% |
売らなくても、数年かけて米国比率はしっかり下がっていきます。S&P500とオルカンを両方持つことになりますが、これは目的のある自然な「両方持ち」です。両方持つときの考え方は、下記記事で図解しています。

それでも売却して乗り換えるなら|タイミングの工夫
「管理を1本にまとめたい」など、どうしても売却して乗り換えたい理由がある場合は、次の点を意識するとダメージを小さくできます。
- 年の初めに行う:その年の年間投資枠がまるごと残っている年初なら、買い直しに使える枠が一番多い
- 売却と購入を同じ日に注文する:市場から離れる期間をできるだけ短くする
- 一度に全部ではなく、年間投資枠に合わせて分ける:枠を超える分は翌年以降に回す
- 課税口座の分は含み益を確認する:税金の額を事前に把握し、NISA口座側を優先して考える
NISA制度は2027年にも見直しが予定されています。改正のポイントは下記記事にまとめています。

私は乗り換える?|S&P500を続ける理由

最後に、私自身の判断をお話しします。結論から言うと、今のところS&P500からオルカンへの乗り換えも、積立先の変更もしない予定です。
私がS&P500を選んだ一番の理由は、日本株を個別株(高配当株中心)で別に持っているからです。インデックス側で日本を持つ必要が薄く、それなら納得して持てる米国一本にしよう、と決めました。この理由は今も変わっていません。
2025年春の下落のときも、つみたて投資枠のS&P500は評価損益率が下がりましたが、積立は止めずに続けました。その結果、2026年8月時点では評価額が約144万円、評価損益は+35.61%まで回復しています。もしあのとき怖くなって売っていたら、その後の回復を取り逃がしていたはずです。
「値動き」では変えない。「選んだ理由」が変わったら変える。これが私の乗り換えのルールです。たとえば、将来日本の個別株を手放してインデックスだけで運用することになったら、そのときは積立先をオルカンに変えることを検討すると思います。
実際のポートフォリオは下記記事で公開しています。

まとめ
- S&P500からオルカンに寄せたいなら、売却せずに積立先だけ変えるのが基本
- NISAで売却した枠は翌年に、簿価(買った金額)分だけ復活する
- 買い直しはその年の年間投資枠を使う。残高が大きいと数年がかりになる
- 売ってから買うまでの価格変動や、課税口座なら約20%の税金にも注意
- 積立先を変えるだけでも、数年で米国比率はしっかり下がる(例:100万円+月2万円×5年で約80%)
- 私は「日本株を個別株で持っている」という理由が変わっていないので、S&P500を継続中
乗り換えを考えたくなるのは、たいてい相場が荒れているときです。そんなときこそ、「自分はなぜS&P500を選んだのか」を思い出してみてください。理由が変わっていないなら続ける、変わったなら積立先を見直す。それだけで、大きな失敗はかなり防げるはずです。
※本記事の制度・数値は2026年9月26日時点で確認できた情報(金融庁、三菱UFJアセットマネジメント、日本経済新聞、SBI証券、松井証券)をもとにしています。表の試算は値動きがないと仮定した単純計算です。特定の商品の購入・売却を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。

