こんにちは。風読珈琲店のカエデです。これまでヴェルスパ大分、ジェイリースFCと、大分県の2クラブを紹介してきました。今回は少し場所を変えて、三重県のJFLクラブ「ヴィアティン三重」を紹介します。

調べてみると、クラブ名の由来からしてユニークで、しかも創設期には「まさかの理由」で足止めを食らったエピソードまで見つかりました。JFLには本当にいろいろな成り立ちのクラブがあるのだと、あらためて実感させられます。
この記事では、ヴィアティン三重がどんなクラブなのか、設立の経緯からJ3クラブライセンス保持クラブとしての歩み、そして2025年シーズンの戦いぶりまでを、JFLを追いかけ始めたばかりの一ファンの目線でまとめます。
大分の2クラブは、どちらも「地元企業が育てたクラブ」という共通点がありました。三重県のヴィアティン三重は、それともまた違う「地域のコミュニティづくり」という理念から生まれたクラブです。JFLを見ていくほど、クラブごとの個性の幅広さに驚かされます。
ヴィアティン三重ってどんなクラブ?

ヴィアティン三重は、三重県桑名市出身の後藤大介氏が中心となり、2012年に設立されたサッカークラブです。オランダのスポーツコミュニティを視察した後藤氏が、「祖父母・親・子の三世代が集えるコミュニティ」を地元でつくりたいという思いから立ち上げました。
- クラブ名の由来:「ヴィアティン(veertien)」はオランダ語で「14」を意味する言葉。オランダ代表の伝説的選手ヨハン・クライフの背番号14にちなんでいる
- クラブ理念:「子どもたちを笑顔に、地域と共に夢と感動を。」
- 運営母体:株式会社ヴィアティン三重ファミリークラブ(トップチーム運営)、特定非営利活動法人ヴィアティンスポーツクラブ(下部組織)
- 総合型スポーツクラブ:サッカーだけでなく、女子サッカー(ヴィアティン三重レディース)や女子バレーボールチームなども傘下に持つ
「三世代が集うコミュニティ」という理念どおり、サッカーの枠を超えて複数の競技を展開しているのが大きな特徴です。単なる企業チームや社会人クラブとは一線を画す、地域密着型の総合スポーツクラブとして育ってきました。
女子バレーボールチームは2025-26シーズンのV.LEAGUEに参戦しており、津市をホームタウンに活動しています。サッカーのトップチームが三重県北部の東員町を拠点にしているのに対し、バレーボールチームは県中部の津市を拠点にするなど、競技ごとにホームタウンを分けながら県内に活動の輪を広げているのも興味深いところです。
ロボット教室が「本業」と判断された、意外な船出
創設初期には、思いがけない壁にもぶつかっています。2013年、Jリーグ百年構想クラブ(準加盟クラブ)への申請が一度却下されたのですが、その理由が「クラブの主要事業がロボット教室『ROBOBASE』と判断されたため」というものでした。
サッカークラブとして認められるには、運営組織がサッカー事業を主体としていることを示す必要があります。この壁を乗り越えるため、2013年7月3日に新たに「株式会社ヴィアティン三重ファミリークラブ」を設立し、サッカー事業を主体とする組織として体制を整え直しました。その後、2015年2月2日には下部組織として特定非営利活動法人ヴィアティンスポーツクラブも設立しています。
華々しいスタートというよりは、組織づくりの試行錯誤から始まった歩みだったことがうかがえるエピソードです。逆に言えば、こうした制度面の壁を早い段階で経験してきたからこそ、後のJ3クラブライセンス取得やスタジアム運営といった「クラブとしての体制づくり」にも早くから力を入れてきたのかもしれません。
三重県リーグ3部から、JFLの入り口までの道のり

- 2012〜2014年:三重県リーグ(県3部から県1部へ昇格)
- 2015〜2016年:東海社会人リーグ(2部から1部へ昇格)
- 2014年:天皇杯に初出場。2回戦でセレッソ大阪と対戦し、延長の末2-4で敗退
- 2016年:全国地域サッカーチャンピオンズリーグで準優勝し、JFL昇格権を獲得。同年12月に正式決定
- 2017年:JFL初参戦。初年度は12位でシーズンを終えた
県リーグの入り口から、わずか5年でJFLの舞台にたどり着いたことになります。JFL初出場のシーズン前年には、格上のJ1クラブ・セレッソ大阪と天皇杯で延長戦にまでもつれる接戦を演じており、地域リーグ時代から一定の実力を示していたクラブだったことが分かります。天皇杯という全国大会の舞台で強豪と渡り合えたことは、クラブにとって大きな自信になったはずです。
2020年からJ3クラブライセンスを継続保持
ヴィアティン三重は、JFLの中でも早い段階からJリーグ入りに向けた準備を整えてきたクラブです。2020年2月にJリーグ百年構想クラブとして承認されると、同年9月15日には初めてJ3クラブライセンスの交付を受けました。以来、毎年申請と交付を積み重ねています。
2023年2月には「Jリーグ百年構想クラブ」から脱退していますが、これは2022年12月の規約改定でJリーグ入会要件から百年構想クラブであることが外れたためで、J3ライセンスの取得や、Jリーグ入会を目指す方針そのものには影響していません。制度上の位置づけが整理されただけで、クラブの目標は一貫しています。同じタイミングで脱退したクラブは全国で3クラブあり、制度そのものが時代に合わせて見直された結果だったことがうかがえます。

2024年、過去最高の5位。そして2025年は指揮官交代を乗り越えて

2024年シーズンは、13勝9分8敗・勝点48でクラブ史上最高となる5位を記録。J3入会の条件付き承認まで得ましたが、最終的に順位が届かず、その年の昇格は実現しませんでした。それでも、着実に力をつけている手応えを感じさせるシーズンでした。
2025年シーズンは、2023年12月に就任した間瀬秀一監督のもとでスタートしましたが、思うように結果が出ず、7月15日に契約解除。コーチを務めていた菅原太郎氏が新監督に就任しました。指揮官交代を経て後半戦は持ち直し、9試合無敗という好成績も記録。最終的には11勝12分7敗・勝点45で7位という成績でシーズンを終えています。
シーズン途中の監督交代を乗り越えて上位で終えられたことは、クラブとして大きな収穫だったはずです。前年の過去最高5位には届きませんでしたが、勝ち星よりも引き分けが多い接戦の多いシーズンでもあり、勝負強さをどう磨いていくかが次の課題として見えてきます。
2017年のJFL初参戦から数えて、2024年の5位はクラブ史上最高順位です。J3ライセンスを毎年更新しながら、その時々の力に応じて順位を上下させつつも、極端に低迷することなくJFLに定着し続けているのがヴィアティン三重の特徴です。一発勝負ではなく、毎年コンスタントに上位争いへ顔を出せる地力を持っているのは、長年かけて積み上げてきた体制づくりの成果とも言えそうです。
スタジアムを自ら運営する、地域密着のかたち
ヴィアティン三重のホームスタジアムは、三重県東員町にある「BASICスタジアム東員」(東員町スポーツ公園陸上競技場、収容人数5,104人)です。単に間借りして試合をするだけでなく、2019年に指定管理者の資格を取得し、2020年4月から10年間にわたってスタジアムの管理運営そのものを担っています。
プレーする場所を自分たちで管理・運営するというのは、JFLクラブの中でも珍しい取り組みです。「三世代が集うコミュニティ」という創設時の理念どおり、試合のある日だけでなく、日常的に地域とスタジアムをつなぐ役割も果たしていることがうかがえます。
収容人数5,104人という規模は、Jリーグのスタジアム基準からすると決して大きくはありません。それでも、指定管理者として日々の維持管理にまで関わることで、単なる「間借りしている競技場」ではなく、クラブと地域が一体となった拠点づくりを進めている点は、他のJFLクラブと比べても際立った特徴と言えそうです。
JFLを観てみたい人へ
ヴィアティン三重のように、地域リーグから一歩ずつ力をつけ、スタジアム運営まで自ら担うクラブの姿を知ると、JFL観戦がより身近に感じられます。「JFLの試合ってどこで観られるの?」という方には、こちらの記事で無料配信・中継の視聴方法をまとめています。JFLそのものの仕組みを詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。


ヴィアティン三重の最新情報は、公式サイトで発信されています。

まとめ
- ヴィアティン三重は、三世代が集うコミュニティを目指して2012年に設立された、三重県桑名市発のクラブ
- クラブ名はオランダ語で「14」を意味し、ヨハン・クライフの背番号にちなむ
- 県リーグ3部から5年でJFL入りを果たし、2020年からJ3クラブライセンスを継続保持している
- 2024年は過去最高の5位を記録。2025年は監督交代を乗り越え、最終7位でシーズンを終えた
- ホームスタジアム「BASICスタジアム東員」の指定管理者として、施設運営にも携わっている
同じJFLでも、企業クラブあり、地域NPO発のクラブあり、そしてヴィアティン三重のような総合型スポーツクラブあり。それぞれの成り立ちを知ってから試合を見ると、ピッチの外にある物語まで含めて応援したくなってきます。ロボット教室の運営法人として出発が一度つまずいた歴史があるからこそ、いまのクラブとしての体制がある——そう考えると、遠回りに見える道のりも、決して無駄ではなかったのだと感じます。

