こんにちは。風読珈琲店のカエデです。ヴェルスパ大分、ジェイリースFC、ヴィアティン三重、VONDS市原、沖縄SV、Honda FC、ブリオベッカ浦安・市川、ミネベアミツミFC、いわてグルージャ盛岡、Y.S.C.C.横浜と紹介してきたJFLクラブシリーズ、今回は静岡県沼津市の「アスルクラロ沼津」を取り上げます。

いわてグルージャ盛岡、Y.S.C.C.横浜に続いて、アスルクラロ沼津もまた2025年シーズン限りでJ3からJFLへ降格したクラブです。調べてみると、このクラブには「サポーターの力でJリーグ退会の危機を乗り越えた」という、シリーズの中でもひときわ印象的なエピソードがありました。
この記事では、アスルクラロ沼津がどんなクラブなのか、クラブ名の由来から、JFLを経てつかんだJ3昇格までの道のり、クラウドファンディングで存続の危機を乗り越えた出来事、そして2025年シーズン限りでのJFL降格までを、JFLを追いかけ始めたばかりの一ファンの目線でまとめます。
アスルクラロ沼津ってどんなクラブ?

アスルクラロ沼津のルーツは、1990年4月に発足した「沼津セントラルスポーツクラブ」にさかのぼります。2003年に「有限会社アスルクラロ沼津」へ名称変更し、2006年には「沼津香陵クラブ」の運営を引き継ぐとともに、現在につながる「アスルクラロ沼津」へクラブ名を改めました。
- クラブ名の由来:スペイン語で「青(Azul)」と「明るい(Claro)」を組み合わせた造語。クラブカラーに由来する
- 本拠地:静岡県沼津市
- ホームスタジアム:愛鷹広域公園多目的競技場(収容人数約10,000人)
- 名称の変遷:沼津セントラルスポーツクラブ(1990年)→有限会社アスルクラロ沼津(2003年)→アスルクラロ沼津(2006年)
富士山を望む港町・沼津を本拠地とするクラブで、「青く、明るく」というクラブ名には、駿河湾の海の色や、地域を照らす存在でありたいという願いが込められているように感じます。沼津といえば、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台としても知られる街で、クラブも地域の観光・文化と結びついた活動を続けてきました。
ホームスタジアムの愛鷹広域公園多目的競技場は、沼津駅からバスで約20分ほどの距離にある競技場です。地方都市のクラブらしく、行政・観光協会・地元企業と連携した地域密着の運営スタイルは、これまで紹介してきたヴィアティン三重やVONDS市原とも共通する部分があります。収容人数は約10,000人と、JFLクラブの中でも比較的規模の大きいスタジアムを本拠地にしています。
JFLを経て、2017年に悲願のJ3昇格
- 2012年:東海社会人サッカーリーグ2部に参加
- 2013年:東海リーグ1部へ昇格。9月にJリーグ準加盟クラブとして承認、J3ライセンスも取得
- 2014〜2016年:JFLでプレー
- 2017年:J3リーグへ参入
2013年の時点でJ3ライセンスをすでに取得していながら、実際にJ3の舞台に立つまでには2014年から2016年までの3シーズンをJFLで過ごす必要がありました。ライセンスを持っているだけでは自動的に昇格できないというJFLの仕組みは、これまで紹介してきたブリオベッカ浦安・市川やヴィアティン三重のケースとも重なる部分です。
2014年はJ3リーグそのものが新設された年でもあり、アスルクラロ沼津はJFLの舞台からその発足を見届ける立場でした。準加盟クラブとしてすでにJ3参入の資格を得ていながら、実際の昇格までにさらに3年を要したという事実は、JFLというカテゴリーの競争の厳しさを物語っています。

2017年にようやくつかんだJ3の切符から2025年シーズンまで、アスルクラロ沼津は9シーズンにわたってJ3の舞台で戦い続けてきました。J3リーグそのものがまだ若いカテゴリーであることを考えると、9シーズンという在籍期間は、決して短い時間ではありません。
クラウドファンディングで乗り越えた、Jリーグ退会の危機

J3昇格後のアスルクラロ沼津は、順風満帆だったわけではありません。ホームスタジアム・愛鷹広域公園多目的競技場のナイター照明は500ルクスにとどまり、Jリーグが求める1,500ルクス基準を満たしていませんでした。改修が実現しなければ、Jリーグのライセンスが発行されなくなる、つまり退会にもつながりかねない状況だったのです。
- 課題:照明設備がJリーグ基準(1,500ルクス)を大幅に下回る500ルクスにとどまっていた
- 2022年2月〜3月:照明改修費用を集めるクラウドファンディングを実施
- 結果:2,254人から目標金額(3,000万円)の133%にあたる約4,014万円が集まり、目標達成
クラブ単独では実現が難しかった照明改修を、2,000人を超えるサポーター・地域の支援で成し遂げたというのは、これまで紹介してきたスタジアム課題を抱えるクラブの中でも、特に印象的なエピソードです。「ラブライブ!サンシャイン!!」とのコラボレーションコースが用意されるなど、地域の文化資源も巻き込みながら、多くの支援を集めたクラウドファンディングでした。
ブリオベッカ浦安・市川やいわてグルージャ盛岡の回で紹介してきたように、JFL・J3クラブにとってスタジアム整備は結果だけではどうにもならない大きな壁です。アスルクラロ沼津のケースは、その壁を「クラブと地域の共同作業」で乗り越えた、数少ない成功例の一つと言えるでしょう。
目標金額の133%という支援の集まり方からも、クラブが地域からどれだけ大切にされているかがうかがえます。行政による大規模改修とは違い、サポーター一人ひとりの寄付が直接スタジアムという「かたち」になったという点で、単なる資金調達以上の意味を持つプロジェクトだったのではないかと思います。
Jリーグクラブがクラウドファンディングでスタジアム設備を改修するという事例は、当時としても珍しい試みでした。地方都市の小規模クラブが直面する課題を、行政の予算だけに頼らず、地域住民との協働で解決していく。そのモデルケースとして、他クラブからも注目された出来事だったと言えそうです。
2025年、J3で20位。入れ替え戦の末にJFLへ

照明改修という大きな課題を乗り越えたアスルクラロ沼津でしたが、2025年シーズンは苦しい結果に終わりました。
- 2025年シーズン成績:36試合で6勝10分20敗、勝ち点28、J3で20位(最下位)
- J3・JFL入れ替え戦第1戦(12月7日・敵地):レイラック滋賀に2-3で敗戦
- J3・JFL入れ替え戦第2戦(12月14日・ホーム):レイラック滋賀と1-1の引き分け
- 2試合合計:3-4でレイラック滋賀が勝利し、J3昇格を決定
2017年から9シーズンにわたって積み上げてきたJ3での歴史は、滋賀県初のJクラブ誕生の舞台となったこの入れ替え戦での敗戦により、一区切りを迎えることになりました。いわてグルージャ盛岡は自動降格、Y.S.C.C.横浜と今回のアスルクラロ沼津は入れ替え戦での敗戦。J3からJFLへの降格にもいくつかのパターンがあることが、シリーズを通じて見えてきました。
2試合合計3-4という僅差のスコアからも分かるように、一方的な力負けだったわけではありません。ホームで迎えた第2戦は1-1の引き分けに持ち込みながらも、アウェーで喫した2点のビハインドを最後まで跳ね返せなかった、という展開でした。あと一歩のところで届かなかった悔しさが、次のシーズンへの原動力になることを期待したいところです。

2025年シーズンの優勝はHonda FC、2位のレイラック滋賀が入れ替え戦の出場権を手にし、そのままアスルクラロ沼津を破ってJ3昇格を決めました。滋賀県にとっては県内初のJクラブ誕生という悲願の瞬間であり、その裏でアスルクラロ沼津にとっては9年間のJ3生活に幕を引く、明暗の分かれる一戦だったことになります。
JFLを観てみたい人へ
クラウドファンディングでスタジアムの危機を乗り越えながらも、2025年シーズンでJ3からの降格を経験したアスルクラロ沼津。「JFLの試合ってどこで観られるの?」という方には、こちらの記事で無料配信・中継の視聴方法をまとめています。JFLそのものの仕組みを詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。


アスルクラロ沼津の最新情報は、公式サイトで発信されています。

まとめ
- アスルクラロ沼津は、1990年発足の沼津セントラルスポーツクラブを前身とする静岡県沼津市のクラブ
- クラブ名はスペイン語で「青(Azul)」と「明るい(Claro)」を組み合わせた造語
- 2013年にJ3ライセンスを取得後、3シーズンのJFLを経て2017年にJ3昇格を果たした
- 2022年、サポーターらによるクラウドファンディングでホームスタジアムの照明改修を実現し、Jリーグ退会の危機を乗り越えた
- 2025年シーズンはJ3で20位に終わり、入れ替え戦でレイラック滋賀に敗れてJFLへ降格した
結果だけを見れば、9年間在籍したJ3からの降格という厳しいシーズンでした。それでも、2,000人を超える支援でスタジアムの危機を乗り越えてきたクラブの底力を思うと、JFLでの再起にも期待したくなります。地域とともに歩んできたクラブがどう巻き返していくのか、引き続き注目していきたいと思います。
これまで紹介してきたいわてグルージャ盛岡・Y.S.C.C.横浜と同じく、アスルクラロ沼津にとってもJFLは久しぶりに足を踏み入れるカテゴリーになります。J3の舞台で9年間積み重ねてきた経験値と、クラウドファンディングで示された地域の結束力。この2つをどう次のシーズンに生かしていけるのか、富士山のお膝元から悲願のJリーグ復帰を目指すアスルクラロ沼津の動向を、引き続き見守っていきたいと思います。
JFLには、アスルクラロ沼津のように一度J3を経験したクラブがいる一方で、FCティアモ枚方のように元Jリーガーたちが自ら立ち上げ、着実に力をつけてきたクラブもあります。2024年3位・2025年4位と2年連続で上位進出を果たしたFCティアモ枚方については、こちらの記事で紹介しています。


