こんにちは。風読珈琲店のカエデです。ヴェルスパ大分、ジェイリースFC、ヴィアティン三重、VONDS市原、沖縄SV、Honda FC、ブリオベッカ浦安・市川、ミネベアミツミFC、いわてグルージャ盛岡、Y.S.C.C.横浜、アスルクラロ沼津、FCティアモ枚方と紹介してきたJFLクラブシリーズ、今回は東京都新宿区の「クリアソン新宿」を取り上げます。

このクラブを知って驚いたのは、所属選手にプロが一人もいないということでした。それなのに、平日夜の国立競技場開催で1万6千人を超える観客を集め、JFL史上最多動員記録を更新しているというのですから、ますます気になります。ここまで紹介してきたクラブとは、規模感からしてまったく違う存在です。
この記事では、クリアソン新宿がどんなクラブなのか、大学サークル仲間による創設から、「社員選手」という独自のチーム構成、新宿区との連携、国立競技場での話題の試合、そして2025年シーズンの成績までを、JFLを追いかけ始めたばかりの一ファンの目線でまとめます。
クリアソン新宿ってどんなクラブ?

クリアソン新宿は、2005年に大学のサッカーサークル仲間が集まって結成したチームがルーツです。2009年に東京都リーグ4部からスタートし、2018年に地域密着を掲げて「クリアソン新宿」へ改称。2021年にJFLへ昇格しました。
- クラブ名の由来:ポルトガル語で「創造」を意味する「Criacao(クリアソン)」。「サッカーを通じて感動を創造し続ける存在でありたい」という理念に由来
- 母体:人材育成・キャリア支援事業を展開するベンチャー企業「株式会社Criacao」
- 選手構成:プロ契約選手はゼロ。会社員として働く「社員選手」と、外部から加入する契約選手が混在するチーム
- 目標:東京23区内初のJリーグクラブとなること
専業のプロ選手を一人も置かず、社員選手と契約選手が同じピッチに立つというチーム編成は、これまで紹介してきたJFLクラブの中でも際立って独自性の強いモデルです。人材育成事業を手がける企業が母体だからこそ実現できている、「サッカーを仕事や人生と両立させる」というコンセプトが、クラブの根幹にあります。
これまで紹介してきたHonda FCやミネベアミツミFCも、企業に所属する選手を中心とした企業クラブでした。ただし、それらのクラブが本業(自動車部品製造など)とサッカーを分けて考えているのに対し、クリアソン新宿は「人材育成」という母体企業の事業そのものと、選手としてのキャリアが地続きになっている点で、また違ったタイプの企業クラブだと言えます。
新宿区との連携、そして東京23区初のJ3ライセンス

2020年10月、クリアソン新宿は新宿区と包括連携協定を締結しました。スポーツ振興だけでなく、多文化共生や高齢者の健康促進、障がい者就労支援など、6つの分野にわたる連携を進めているのが特徴です。単なる「応援されるクラブ」ではなく、行政のパートナーとして地域課題に関わっていく姿勢がうかがえます。
- 2020年:新宿区と包括連携協定を締結(スポーツ振興・多文化共生など6項目)
- 2023年:東京23区のクラブとして初めてJ3クラブライセンスの交付を受ける
- ホームスタジアム:本拠地の専用スタジアムを持たず、国立競技場や西が丘サッカー場など複数会場を使用(特例によりスタジアム基準をクリア)
本来、J3ライセンスの取得にはクラブ専用に近い形のホームスタジアムが求められますが、クリアソン新宿は特例的に国立競技場を中心とした複数会場の使用が認められました。都心のクラブならではの事情に配慮された、異例の措置だったと言えます。
これまで紹介してきたブリオベッカ浦安・市川やいわてグルージャ盛岡は、専用スタジアムの収容人数や照明設備がJリーグ基準に届かないという課題を抱えていました。クリアソン新宿の場合は逆に、東京23区内に専用スタジアムを持つこと自体が現実的に難しいという、大都市クラブならではの事情があります。国立競技場のような大規模施設を間借りする形でホームゲームを開催するというのは、地方クラブとはまったく異なるアプローチでこの課題に向き合っている例だと言えるでしょう。

平日ナイターの国立競技場に1万6千人超

クリアソン新宿の名前を一躍有名にしたのが、国立競技場で開催するホームゲームの動員力です。
- 2024年6月7日:FCティアモ枚方戦で16,480人を動員し、JFL歴代最多入場者数を更新
- 2025年6月15日:同カードで16,755人を動員し、記録をさらに更新
平日夜のナイターにもかかわらず、アマチュアリーグであるJFLの試合に1万6千人を超える観客を集めるというのは、これまで紹介してきたどのクラブにもない規模感です。KPMGコンサルティングとのサステナビリティ共創プロジェクトなど、企業との連携を積極的に打ち出しているのも、このクラブならではの特徴です。都心という立地と、母体企業が持つビジネスネットワークを生かした、独自の集客モデルを築いていると言えそうです。
KPMGコンサルティングとの取り組みでは、新宿という地域を起点にしたサステナビリティ(持続可能性)の共創プロジェクトが進められています。スポーツクラブが単に「観る・応援する」対象にとどまらず、企業や自治体を巻き込んだ社会課題解決の場としても機能しているというのは、都心に本拠を置くクラブならではの発展形と言えるかもしれません。
ちなみに、この記録的な動員を集めた2025年6月15日の一戦は0-1で敗れており、当時は4連敗中だったと伝えられています。観客動員という「ビジネス面」での成功と、勝敗という「競技面」での結果が必ずしも比例しないというのも、JFLの厳しさを物語っているように感じます。
それでも、平日の夜にわざわざ国立競技場まで足を運ぶ1万6千人超えの観客がいるという事実は、それだけこのクラブの取り組みに共感する人が多いことの証でもあります。単なる「JFLの一クラブ」という枠を超えて、都心ならではの人の集まりやすさと、母体企業の発信力をかけ合わせた集客モデルは、他のJFLクラブにとっても参考になる部分が多いのではないかと感じます。
2025年、残留争いに巻き込まれた12位
2025年シーズンのクリアソン新宿は、16クラブ中12位という結果に終わりました。
北嶋秀朗監督(元日本代表FW)は、シーズンを振り返り「昇格をめざして始めたがその目標に届かず、最後は残留争いに巻き込まれてしまったところに悔しさと申し訳なさを感じる一年だった」と語ったと伝えられています。国立競技場に1万6千人を超える観客を集める一方で、ピッチの上では苦しいシーズンだったというのが、2025年のクリアソン新宿の実情でした。
北嶋監督は、市立船橋高校から柏レイソル・清水エスパルス・ロアッソ熊本でプレーし、日本代表にも選ばれた元FWです。引退後はロアッソ熊本やアルビレックス新潟、大宮アルディージャでコーチを歴任してきた指導者で、社員選手という特殊な編成のチームを率いるにあたっても、豊富な指導経験を積んできた人物だったと言えます。
これまで紹介してきたFCティアモ枚方のように上位争いに絡むクラブもあれば、クリアソン新宿のように集客面での存在感の大きさと、順位という結果が必ずしも一致しないクラブもある。JFLというリーグの中には、勝敗だけでは測れない多様な「強さ」があることを、このクラブは教えてくれます。
社員選手というチーム編成は、就業と競技を両立させる分、練習時間の確保など専業のプロクラブとは異なる制約もあるはずです。それでも12位という順位でシーズンを終えられたのは、限られた時間の中でチームを作り上げてきたスタッフ・選手たちの積み重ねがあってこそだと言えるでしょう。
JFLを観てみたい人へ
社員選手というユニークなチーム構成で、国立競技場に1万6千人超えを集めるクリアソン新宿。「JFLの試合ってどこで観られるの?」という方には、こちらの記事で無料配信・中継の視聴方法をまとめています。JFLそのものの仕組みを詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。


まとめ
- クリアソン新宿は、2005年結成の大学サークルをルーツとする東京都新宿区のクラブ
- クラブ名はポルトガル語で「創造」を意味する「Criacao」に由来し、プロ選手ゼロ・社員選手中心というユニークなチーム編成を持つ
- 2020年に新宿区と包括連携協定を締結し、2023年に東京23区初のJ3クラブライセンスを取得した
- 国立競技場でのホームゲームは2年連続でJFL歴代最多入場者数を更新(2025年は16,755人)
- 2025年シーズンは12位に終わり、北嶋秀朗監督は残留争いに巻き込まれたシーズンへの悔しさを語った
専業のプロ選手を置かず、会社員として働く選手たちが国立競技場を満員近くまで埋めるという光景は、これまで紹介してきたJFLクラブの中でも、ひときわユニークな存在感を放っています。東京23区内初のJリーグクラブという目標に向けて、ピッチの内外でどんな歩みを見せてくれるのか、引き続き注目していきたいと思います。
これまで紹介してきた地方クラブの多くが「地域の顔」として少しずつ知名度を広げてきたのに対し、クリアソン新宿はすでに国立競技場を満員に近い状態にできるだけの発信力を持っています。あとはピッチの上での結果をどう積み重ねていくか。JFLというリーグの多様さを、あらためて実感させてくれるクラブでした。

