こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
新NISAで一番人気の投資信託「オルカン」(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))に、兄弟ファンドが登場しました。三菱UFJアセットマネジメントが2026年9月30日に設定する「オルカン高配当」(正式名称:eMAXIS 高配当全世界株式(オール・カントリー)配当払出型/資産成長型)です。
オルカン系の投資信託どうしの比較(どのファンドを選ぶか)は、下記記事も併せてご確認ください。

「あのオルカンの高配当版」「年4回配当がもらえる」と聞くと、つい気になってしまいますよね。私自身、個別株では高配当株を中心に買っている“配当好き”なので、ニュースを見たときは正直ワクワクしました。
ただ、中身を調べてみた結論は、20代〜30代の資産形成期なら、オルカン高配当はいらない。普通のオルカン(またはS&P500)で十分というものです。この記事では、オルカン高配当の基本スペックを整理したうえで、「いらない」と考える理由を5つ、そして逆に「この人には向いている」というケースまで、正直にまとめます。
オルカン高配当とは?基本スペックを整理

まずはオルカン高配当がどんな商品なのか、普通のオルカンと並べて確認しておきましょう。
| 項目 | オルカン高配当 | 普通のオルカン |
|---|---|---|
| 正式名称 | eMAXIS 高配当全世界株式(オール・カントリー) | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) |
| 連動指数 | MSCI ACWI 高配当利回り指数 | MSCI ACWI |
| 信託報酬(税込) | 年0.165%以内 | 年0.05775%以内 |
| 分配 | 配当払出型:年4回(3・6・9・12月) 資産成長型:年1回(9月)・分配抑制 | 年1回・分配抑制 |
| NISA | 成長投資枠のみ | つみたて投資枠・成長投資枠 |
| 設定日 | 2026年9月30日 | 2018年10月31日 |
連動する「MSCI ACWI 高配当利回り指数」は、オルカンの親指数であるMSCI ACWIの中から、配当の持続性や財務の質(クオリティ)といった基準を通過し、配当利回りが親指数の1.3倍以上の銘柄だけを集めた指数です。購入時手数料・信託財産留保額はどちらもかからず、SBI証券・楽天証券・マネックス証券などのネット証券で購入できます。
配当払出型は、経費を差し引いた後の配当等収益の全額を年4回分配する仕組み。資産成長型は分配を抑えて、ファンドの中で再投資していくタイプです。
オルカン高配当が「いらない」5つの理由

ここからが本題です。20代・30代で、これから資産を育てていく人にとって、オルカン高配当をわざわざ選ぶ必要はないと考える理由を5つ挙げます。
理由① 信託報酬が普通のオルカンの約2.9倍
オルカン高配当の信託報酬は年0.165%。業界全体で見れば十分に低コストですが、比較相手が普通のオルカン(年0.05775%)だと話が変わります。コストは約2.9倍です。
差は年0.1%ほどなので小さく見えますが、長期の積立では効いてきます。私が試算したところ、毎月3万円を30年間積み立て、どちらも年5%で成長したと仮定した場合、信託報酬の差だけで最終的な資産額に約46万円の差がつきました(年7%なら約68万円)。同じ「全世界の株」に投資しながら、手数料だけでこれだけ変わるのは見過ごせません。
※試算は信託報酬の差のみを反映した単純計算で、実際の運用成果(指数そのものの値動きの違い)は含んでいません。
理由② 「オルカン」の名前だけど、中身は別物
普通のオルカンが約2,500銘柄に投資するのに対し、オルカン高配当の指数は約700銘柄。高配当株だけに絞り込むので、当然ながら中身は大きく変わります。
- 上位銘柄:普通のオルカンはエヌビディア・アップル・マイクロソフトなど成長企業が上位。オルカン高配当はエクソンモービル・ジョンソン・エンド・ジョンソン・アッヴィなど、エネルギー・ヘルスケア・金融が中心
- 米国比率:普通のオルカンは6割強、オルカン高配当は約5割。そのぶん日本やスイス、欧州の比率が高め
- 配当利回り:普通のオルカンが1%台半ばなのに対し、オルカン高配当は3%台(報道ベース)
オルカンの一番の魅力は「世界の株式市場をまるごと、時価総額どおりに持つ」ことでした。高配当株だけに絞るのは、むしろ「銘柄を選ぶ」方向に一歩踏み出した商品です。配当をあまり出さずに利益を再投資して成長するタイプの企業(大型テック株など)はほとんど入らないので、「全世界に分散しているから安心」という感覚で買うと、イメージとのズレが出てきます。
そもそもオルカンとS&P500のどちらを選ぶかで迷っている方は、下記記事も併せてご確認ください。

理由③ つみたて投資枠で買えない
オルカン高配当は、NISAの成長投資枠でしか購入できません。連動する指数が、つみたて投資枠の対象として指定された指数ではないためです。
20代の新NISAの主戦場は、毎月コツコツ積み立てる「つみたて投資枠」(年120万円)です。成長投資枠でも積立はできますが、まずはつみたて投資枠を埋めるのが先。つみたて投資枠を普通のオルカンやS&P500で埋め、それでも余裕がある人が成長投資枠で検討する――という順番になるので、多くの20代にとっては「そもそも出番がない」商品と言えます。
2027年からの新NISAの制度改正については、下記記事も併せてご確認ください。

理由④ 分配金は「おまけ」ではなく、資産から払われる
配当払出型で年4回の分配金を受け取れるのは魅力的に見えます。でも、分配金は運用成果とは別に上乗せされるボーナスではありません。これは運用会社の三菱UFJアセットマネジメント自身も、設定時の資料で「分配金はファンド資産の一部から支払われ、その分だけ基準価額の下落要因になる」と明記しています。
資産形成期に大事なのは、利益をそのまま再投資して雪だるま式に増やす「複利」の力です。定期的にお金を外に出してしまうと、その分だけ複利で増える元手が減ることになります。受け取った分配金を再投資すれば同じでは?と思うかもしれませんが、NISAの場合は再投資にあらためて非課税枠を使いますし、課税口座なら分配のたびに約20%の税金が引かれてしまいます。
では「資産成長型」ならいいのかというと、分配をせずに中で再投資するなら、それはもう普通のオルカンとやっていることがほぼ同じ。わざわざコストの高い、銘柄の偏ったほうを選ぶ理由が見当たりません。
理由⑤ 取り崩しは普通のオルカンでもできる
オルカン高配当の配当払出型は、もともと「オルカンなどで資産を築いた人が、退職後などに資産を使っていく段階」を想定した商品です。つまりターゲットは、いまの20代ではなく、将来の取り崩し期の人たち。
しかもその取り崩しも、運用会社自身が資料の中で「分配を抑制するファンドを保有しながら、必要な分だけ売却していく方法も引き続き選択肢の一つ」と書いています。最近は、証券会社によっては投資信託を毎月「定額」や「定率」で自動売却してくれるサービスもあるので、普通のオルカンを持ったまま“自家製の分配金”を作ることもできます。
取り崩しの時期はまだ何十年も先。そのときにどんな商品や制度があるかもわかりません。いまから取り崩し用の商品を買っておく必要はないと考えています。
それでもオルカン高配当の良いところは?
ここまで「いらない」と書いてきましたが、フェアに見ると、オルカン高配当にも良いところはあります。
- 下落局面に比較的強い:報道によると、2022年の年間騰落率は普通のオルカンの指数がマイナス17.96%だったのに対し、高配当指数はマイナス6.73%にとどまりました
- 超長期ではむしろ好成績の期間も:1994年6月以降の年率リターンは、高配当指数(9.82%)がMSCI ACWI(8.69%)を上回っています
- 高配当ファンドとしては低コスト:アクティブ型の世界高配当株ファンドには信託報酬が年1%を超えるものも多く、年0.165%は十分に安い水準です
一方で、直近3年・5年・10年の年率リターンは、いずれも普通のオルカンの指数が上回っています(10年で年12.80%対9.79%)。つまり、どちらが勝つかは時期によって入れ替わるということ。未来の「どっちが勝つか」は誰にもわからないからこそ、20代の私は「一番安く、一番広く」持てる普通のオルカンやS&P500を土台にするのが合理的だと考えています。
オルカン高配当が向いているのはこんな人

逆に、次のような人には検討する価値があると思います。
- 退職後など、資産を「使う」段階に入った人:運用会社の想定どおりの使い方。年4回、自動的に現金が入ってくる安心感は大きい
- 自分で売却するのが心理的にしんどい人:「いつ、いくら売るか」を決めるのが苦手なら、分配金として自動で受け取る仕組みが投資を続ける助けになる
- つみたて投資枠はすでに埋めていて、成長投資枠で配当を楽しみたい人:個別の高配当株を1つずつ選ぶより、1本で世界中の高配当株に分散できる
ちなみに私も、個別株では日本の高配当株(INPEX、JT、三菱HCキャピタルなど)を少しずつ持っています。ただしそれは「配当が入ってくる楽しみ」のための“サテライト枠”。資産形成の本体は、つみたて投資枠でのS&P500積立と企業型DCです。配当はあくまでお楽しみ、本体はシンプルに――という線引きをしておくと、商品選びで迷いにくくなります。
コアとサテライトの考え方については、下記記事も併せてご確認ください。

私の実際のポートフォリオは、下記の運用報告で公開しています。

まとめ
- オルカン高配当は2026年9月30日設定、MSCI ACWI 高配当利回り指数に連動、信託報酬は年0.165%
- 信託報酬は普通のオルカンの約2.9倍。月3万円×30年の試算で約46万円の差
- 銘柄数は約700と絞り込まれ、上位は成長テック株ではなくエネルギー・ヘルスケア。「オルカン」でも中身は別物
- つみたて投資枠では買えず、成長投資枠のみ
- 分配金は資産から払われるもので、資産形成期には複利の妨げに。取り崩しは普通のオルカンの定額・定率売却でも代用できる
- 向いているのは、資産を使う段階に入った人や、自分で売るのが苦手な人
「オルカン」という名前と「高配当」という響きの組み合わせは強力ですが、20代の資産形成なら、普通のオルカン(またはS&P500)を淡々と積み立てるのが一番というのが私の結論です。新商品に飛びつく前に、自分がいま「資産を育てる段階」なのか「使う段階」なのかを考えてみてくださいね。
※本記事は2026年9月26日時点の三菱UFJアセットマネジメントの公表資料(『オルカン高配当』の設定について)および報道をもとにしています。指数の構成・リターン等は報道時点のもので、将来の運用成果を保証するものではありません。特定の商品の購入・売却を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。

