講談社選書メチエ2026年9月新刊2冊|トンデモと科学・近代日本陶芸史

A warm cup of coffee with books and pumpkins on a cozy indoor table setting. 本
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こんにちは。風読珈琲店のカエデです。

新書より少し腰を据えて、ひとつのテーマを深く追いかけたいときに頼りになるのが講談社選書メチエ。研究者が最新の問題意識をそのまま一般読者に向けて書いてくれる、ちょっと背伸びしたい読書にぴったりのシリーズです。

今回は、2026年9月10日(木)発売の講談社選書メチエ2冊を、講談社の公式情報をもとに紹介します。物理学者が科学の「裏側」をたどる『トンデモと科学のあいだ』と、美術史家が日本陶芸の百年を読み解く『近代日本陶芸史』。理系と文系、まったく違う分野ながら、どちらも「ホンモノとニセモノ」「正統と異端」の境界を問い直す、不思議と響き合う2冊です。


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2026年9月の講談社選書メチエ 新刊ラインナップ一覧

まずは2冊の全体像から。発売日はいずれも2026年9月10日(電子版は9月9日)、価格は講談社公式サイト記載の定価(税込)です。

  • トンデモと科学のあいだ(田口善弘 著/200ページ/1,980円)
  • 近代日本陶芸史:ゲテモノからニセモノ、そして現代アートへ(藤原貞朗 著/288ページ/2,420円)

どちらも選書としては比較的コンパクトで、メチエ入門にもおすすめしやすい分量です。以下、1冊ずつ見ていきます。

『トンデモと科学のあいだ』田口善弘|教科書に載らない「裏返しの科学史」

Two educators discussing math and chemical formulas on a blackboard.
Photo by Vitaly Gariev on Pexels

著者の田口善弘さんは中央大学理工学術院教授。『砂時計の七不思議』で講談社科学出版賞を受賞し、バイオインフォマティクスの分野では「世界で最も影響力のある研究者トップ2%」に2021年度から5年連続で選ばれている物理学者です。ブルーバックスの『はじめての機械学習』や現代新書の『知能とはなにか』など、一般向けの著書も多い方です。

本書のテーマは、科学の歴史を「裏返し」に見ること。今ではトンデモな概念がかつては主流の学説だったり、逆に当たり前の概念がかつてはトンデモ扱いだったり。さらにはトンデモな仮説から正しい答えが導かれたり、結果も導出過程もトンデモなのに現実に合っていたり――。アリストテレスから生成AIまで、科学者たちの「教科書に載らない悪戦苦闘」をたどる一冊です。

目次から見える読みどころ

  • アリストテレスは力学が苦手?:現実とすり合わない思弁から話がスタート
  • オカルト扱いだったニュートンの万有引力:「人類の納得」より「現実のうまい説明」が勝った瞬間
  • 熱素説とカルノー・サイクル:間違った仮説から正しい答えが導かれた例
  • ナビエ-ストークス方程式:結果も導出もトンデモなのに……
  • プランク定数とアインシュタイン:「便宜上の仮説」が量子革命を導いた

各章にはコラムや「幕間劇」もあり、「ライト兄弟の初飛行は科学の問題か?」「ニュートンに消されたフック」といったタイトルを見るだけでわくわくします。最後のコラムは大陸移動説と地磁気の逆転。高校で物理をなんとなく避けてきた私のような文系読者でも、科学者の人間くさいドラマとして楽しめそうです。

「はじめに」のタイトルは「わからなくても解ければいい?」。理屈はよくわからないけれど計算は合う、という状態は、実は生成AIをめぐる今の議論にも通じます。仕事でAIツールを使う機会が増えた社会人にとっても、「理解とは何か」を考えるきっかけになりそうです。

  • こんな人に:科学史を人物ドラマとして読みたい人、「正しい科学」とは何かを考えたい人
  • 読みどころ:「裏」こそ「表」――科学の本質を逆側から照らす視点

『近代日本陶芸史』藤原貞朗|陶芸は昭和元年から現代アートだった

Vintage pottery displayed in a traditional Kurashiki shop window, showcasing Japanese craftsmanship.
Photo by Karolina on Pexels

著者の藤原貞朗さんは茨城大学人文社会科学部教授で、専門は美学・美術史。同じ講談社選書メチエの『ルーヴル美術館 ブランディングの百年』や、サントリー学芸賞を受けた『オリエンタリストの憂鬱』で知られる研究者です。

公式の紹介によると、いまや欧米のギャラリストが熱狂し、「日本人だけが知らない現代アート」とまで言われる日本陶芸は、実は昭和元年から現代アートであり続けてきたというのが本書の主張。そしてそれは「アヤシイ歴史のるつぼ」の中で育まれた、とも。

ゲテモノ、コッピー、ニセモノ――刺激的な章立て

  • 「下手もの」革命:リーチ、富本憲吉、柳宗悦が日用雑器に美を見出したはじまり
  • 魯山人の「コッピー」:民藝派を批判した北大路魯山人による古陶の写しを「シミュレーショニズム」として読む
  • 「永仁の壺」:加藤唐九郎をめぐる贋作事件を、近代陶芸のパラレル・ワールドとして捉える
  • 戦後〜現代:八木一夫らの前衛陶芸、加守田章二のモダニズム陶芸、茶碗のポストモダン化、ジェンダーの問題まで

本書から引かれている「陶芸は常にモダンアートであり、現代アートだった」という一文が、この本の姿勢をよく表しています。多様性の名のもとにカオスになった陶芸史を「交通整理」して、すっきり見通せる通史を編む――というのが著者のねらいです。

美術展に通うようになってから、展示室の陶磁器の前で「これはどう見ればいいんだろう」と立ち止まることがよくありました。百年分の流れが頭に入れば、民藝館や美術館での見え方がかなり変わりそうで、個人的にいちばん楽しみな一冊です。

  • こんな人に:美術館で陶芸を見るのが好きな人、民藝や魯山人に興味がある人
  • 読みどころ:「ホンモノ/ニセモノ」の物語から読み解く、陶芸家たちの百年史
藤原貞朗/講談社
¥2 (時点)

2冊に共通するテーマと、あわせて読む楽しみ

A focused young girl studying at a library desk with books and a laptop.
Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels

分野はまったく違う2冊ですが、並べてみると共通点が見えてきます。

  • 「正統」は後から決まる:トンデモ扱いされた仮説が主流になり、ゲテモノと呼ばれた器が美術になる。どちらも評価の移り変わりを描いています
  • ニセモノの創造性:間違った仮説から正しい答えが出る科学、写し(コッピー)から新しい表現が生まれる陶芸。「本物でないもの」が歴史を動かす面白さがあります
  • 人物ドラマとして読める:ニュートンやアインシュタイン、魯山人や唐九郎。理論や作品の背後にいる人間の悪戦苦闘が主役です

10月の講談社選書メチエ新刊も紹介しています。あわせてどうぞ。

講談社選書メチエ2026年10月新刊3冊|空海・日仏の自由・生成文法
2026年10月15日発売の講談社選書メチエ3冊を紹介。フランス弁護士が日本の「自由」を問う『日本の法に「自由」はあるか?』、ハーバード大教授が描く『空海の思想』、生成文法を検討する大作『言文学原論I』の内容・価格・おすすめの読者をまとめました。

同じ9月に発売されたブルーバックスの新刊3冊もまとめています。理系の新書が気になる方はこちらもどうぞ。

ブルーバックス2026年9月新刊3冊|細胞の会話・不老長寿・温度センサー
2026年9月17日発売の講談社ブルーバックス新刊3冊を紹介。細胞と臓器の情報伝達をたどる『会話する細胞』、タケやクラゲから死の意味に迫る『不老長寿の進化学』、ノーベル賞研究の温度センサーを解説する『生命にとって温度とは何か』の内容・価格・読みどころをまとめました。

刊行情報の詳細は、講談社の「書籍発売予定表」で確認できます。

書籍発売予定表(紙版)|講談社
書籍(紙版)の発売予定日をご案内します。発売日の情報をご自身のメールアドレスに送信してリマインダー代わりにお使いください。

まとめ

  • 2026年9月の講談社選書メチエは9月10日発売の2冊
  • 科学史:『トンデモと科学のあいだ』――アリストテレスから生成AIまで、科学の「裏」をたどる
  • 美術史:『近代日本陶芸史』――ゲテモノ・ニセモノから現代アートへ、陶芸家たちの百年

「ホンモノとは何か」を、科学と陶芸という別々の入り口から考えさせてくれる2冊です。どちらも分量はほどよく、選書デビューにもおすすめ。秋の読書のお供に、ぜひ手に取ってみてください。それでは、また風読珈琲店でお会いしましょう。

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