こんにちは。風読珈琲店のカエデです。前回、JFL(日本フットボールリーグ)で悲願のJ3昇格を目指すヴェルスパ大分というクラブを紹介しました。

その記事の中で少し触れた「大分ダービー」のもう一方の主役が、今回紹介するジェイリースFCです。調べてみると、こちらはヴェルスパ大分とはまったく違うタイプの成り立ちを持つクラブで、しかも2025年に大きな成果を挙げていました。
この記事では、ジェイリースFCがどんなクラブなのか、大分県リーグの3部から駆け上がった急成長の歩みと、2025年に悲願のJFL昇格を決めた道のりを、JFLを追いかけ始めたばかりの一ファンの目線でまとめます。
同じJFLクラブでも、20年以上かけて少しずつ力をつけてきたクラブもあれば、数年で一気に駆け上がってきたクラブもある。その違いを知ってから試合を見ると、選手一人ひとりの背景や、クラブが積み重ねてきた時間の重みが違って見えてきます。
ジェイリースFCってどんなクラブ?

ジェイリースFCは、大分市に本社を置く家賃債務保証会社「ジェイリース株式会社」が、CSR活動(地域貢献活動)の一環として2018年4月2日に設立したクラブです。大分市を拠点とするNPO法人カティオーラ(カティオーラFC)と連携する形でスタートしており、いわばカティオーラFCを前身とする実業団チームにあたります。
- 設立:2018年4月2日。運営会社ジェイリースのCSR活動の一環として発足
- ホームタウン:大分市
- 主なホームスタジアム:ジェイリーススタジアム(大分市営陸上競技場の愛称。命名権を取得)。収容人数は15,943人
- チームカラー:スポーツを通じたまちづくり・地域貢献をクラブの理念に掲げ、SDGsへの取り組みにも積極的
ヴェルスパ大分が2003年発足・20年超の歴史を持つ「手作り」のクラブだったのに対し、ジェイリースFCは2018年発足とまだ若く、しかも東証プライム上場企業がバックについているという対照的な成り立ちを持っています。同じ大分市を本拠地としながら、生い立ちがまったく違う2クラブというのも興味深いところです。
クラブ名の由来にもなっている「ジェイリース」という社名は、運営会社の家賃債務保証事業に由来します。実業団チームでありながら、社名をそのままクラブ名にしているのは、地域貢献活動の一環であることを分かりやすく打ち出す狙いもあるのでしょう。
県リーグ3部から駆け上がった、わずか数年の急成長
ジェイリースFCの歩みで驚かされるのが、そのスピードです。発足からわずか数年で、大分県の地域リーグから全国リーグの入り口まで駆け上がっています。
- 2018年:大分県社会人サッカーリーグ3部に参戦し、優勝
- 2019年:大分県社会人サッカーリーグ2部で優勝
- 2020年:大分県社会人サッカーリーグ1部で優勝
- 2021年:九州サッカーリーグに昇格
- 2024年:大分県サッカー選手権で初優勝し、天皇杯に初出場
県内リーグを3年連続で優勝しながら駆け上がり、2021年には九州サッカーリーグ入りを果たしているというスピード感は、地域リーグの中でも際立っています。ただし、そこからJFL昇格までにはさらに5年、九州リーグでの雌伏の時間が必要でした。
2025年、悲願のJFL昇格を決めた「全国地域CL制覇」

2025年、ジェイリースFCはついに大きな成果をつかみます。九州サッカーリーグで都農(ヴェロスクロノス都農)や延岡との争いを制して初優勝。この勝利により、JFL昇格をかけた全国大会「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)2025」への出場権を獲得しました。
地域CLは、全国9地域のリーグを勝ち上がった代表クラブが集まり、JFL昇格をかけて争う大会です。2025年大会は1次ラウンドを4チームずつ3グループに分けたリーグ戦で行い、各グループ1位と、2位クラブの中で最も成績のよい1チームの計4チームが決勝ラウンドに進出。11月20日から24日にかけて決勝ラウンドが行われました。
全国各地の地域リーグ代表がひしめく中での決勝ラウンド3連勝は、簡単なことではありません。地域CLは毎年、長年挑み続けても届かないクラブがいる一方で、初出場・初優勝で駆け抜けるクラブもある、番狂わせの多い大会として知られています。ジェイリースFCは九州リーグでの5年間で力を蓄え、満を持して臨んだ大会で結果を出した形です。
- 決勝ラウンドで3戦全勝、勝ち点7で優勝
- 最終戦は東京ユナイテッド(関東代表)を1-0で下して有終の美
- 優勝により、来季のJFL自動昇格が事実上決定(12月4日のJFL理事会で正式承認される見通し)
大分県リーグ3部から出発して7年、九州リーグでの5年間を経て、ついに地域CLの頂点に立ちました。ちなみに決勝ラウンドで2位となったVONDS市原(千葉)は、今季JFL15位だったアトレチコ鈴鹿との入れ替え戦に回ることになり、地域CLの厳しさを物語っています。VONDS市原にとっては3年連続の入れ替え戦挑戦で、勝ち上がるクラブと涙をのむクラブの差が紙一重であることがよく分かります。「優勝すれば昇格、2位以下は入れ替え戦」という仕組みは、JFLからJ3への昇格の仕組みともよく似ています。

上場企業がバックにつく、新しいクラブのかたち

運営会社のジェイリース株式会社は、2004年に大分県で創業した家賃債務保証(家賃の滞納保証)を中心とする保証関連事業の会社です。2016年に東証マザーズへ上場したのち、2018年に東証一部へ市場変更し、現在は東証プライム市場(証券コード7187)に上場しています。2025年3月期の売上高は過去最高の172億円で、直近5期で2.3倍に成長しているという急成長企業です。
JFL昇格を見据えた動きとして、2025年4月1日にはジェイリースの100%子会社として「ジェイリースフットボールクラブ株式会社」を新たに設立し、チームを法人化しました。プロクラブの運営には財務基盤や組織体制の整備が求められるため、こうした法人化はJリーグのクラブライセンス取得に向けた土台づくりの一歩とも言えます。ヴェルスパ大分はすでにJ3クラブライセンスを取得済みですが、JFL初挑戦となるジェイリースFCにとっては、これから重ねていく課題です。
企業スポーツというと、かつては「福利厚生の延長」というイメージも強くありましたが、ジェイリースFCの場合は上場企業のCSR・地域貢献活動として明確に位置づけられている点が特徴です。本業の家賃保証事業で全国に拠点を広げながら、地元・大分ではサッカークラブを通じたまちづくりに力を入れる。本業と社会貢献の両輪で成長してきた企業の姿勢が、クラブの急成長にもつながっているように感じます。
大分県に、もうひとつのJFLクラブが誕生
ジェイリースFCのJFL昇格が実現すると、大分県にはヴェルスパ大分とジェイリースFCという2つのJFLクラブが並び立つことになります。同じ都道府県に2つもJFLクラブがあるのは全国的にも珍しく、しかも両クラブとも「地元企業が主体になって育ててきたクラブ」という共通点を持っています。
大分県には、Jリーグ・大分トリニータに加えてこの2つのJFLクラブが存在することになり、県内サッカーの層の厚さを感じさせます。Jリーグ入りをはっきり掲げるヴェルスパ大分と、地域貢献を理念に掲げながら着実に結果を出してきたジェイリースFC。ホームタウンが同じ大分市だからこそ実現する「大分ダービー」は、これから注目のカードになりそうです。
ホームスタジアムも対照的です。ヴェルスパ大分が大分トリニータと同じ「クラサスドーム大分」を主戦場のひとつにしているのに対し、ジェイリースFCは大分市営陸上競技場を改称した「ジェイリーススタジアム」がホーム。同じ大分市内に、命名権を持つスタジアムがもうひとつ生まれたことになります。ヴェルスパ大分については、こちらの記事でも紹介しています。

JFLを観てみたい人へ
ジェイリースFCのように、地域リーグからコツコツ勝ち上がってJFL入りを果たすクラブの物語は、JFL観戦の醍醐味のひとつです。都道府県リーグ、地域リーグ、そしてJFLへと、一段ずつ階段を上がっていくクラブを追いかけていると、いつの間にか自分ごとのように応援したくなってくるから不思議です。「JFLの試合ってどこで観られるの?」という方には、こちらの記事で無料配信・中継の視聴方法をまとめています。JFLそのものの仕組みを詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。


ジェイリースFCの最新情報は、公式サイトや公式X(旧Twitter)で発信されています。


まとめ
- ジェイリースFCは、大分市の家賃債務保証会社ジェイリースが2018年に設立したクラブ
- 大分県リーグ3部→2部→1部と3年連続優勝で駆け上がり、2021年に九州サッカーリーグ入り
- 2025年、九州リーグ初優勝を経て全国地域CLを制し、悲願のJFL自動昇格を決めた
- 2025年4月には運営会社の100%子会社として法人化し、Jリーグを見据えた体制づくりを進めている
- 大分県にはヴェルスパ大分と合わせて2つのJFLクラブが誕生し、「大分ダービー」が注目カードに
県リーグ3部から出発して、わずか7年で全国リーグの入り口までたどり着いたジェイリースFC。ヴェルスパ大分とはまた違う成り立ちを知ると、同じ大分ダービーでも見え方が変わってきます。地元企業が本業を伸ばしながらクラブを育てる姿と、長い年月をかけてJリーグ入りを目指してきたクラブの姿。どちらも「地域とともにある」という一点でつながっているように思います。これから両クラブがどう歩んでいくのか、引き続き追いかけていきたいと思います。

