こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
妻の影響でフィギュアスケートを観るようになってから、ニュースで「スケート」という言葉が出てくると、つい手が止まるようになりました。最近気になったのが、車いすやストレッチャーのまま氷の上に出て、みんなで一緒に滑るという取り組みです。「氷上で広がるバリアフリー」「誰もが楽しめるリンクへ」――そんな言葉で紹介されるこの動きが、2026年に入ってぐっと広がってきています。
恥ずかしながら、私は「車いすでスケートリンクに入れるの?」というところから知りませんでした。この記事では、観戦歴の浅い初心者の目線で、車いすのまま滑る「パラスケート(チェアスケート)」の仕組み、国内の取り組み、海外の動き、そして参加・応援したいときの情報の追い方までを紹介します。
※本記事は2026年9月26日時点で、各団体の公式サイト・クラウドファンディングページ・報道で確認できた情報をもとにしています。体験会の日程や参加条件は変わることがあるので、参加前には必ず主催者の最新告知を確認してください。
そもそも、車いすでスケートリンクには入れない?

まず前提として、一般のスケートリンクでは車いすやベビーカーのまま氷の上に出ることは基本的にできません。滑走中のスケーターとぶつかる危険があるうえ、エッジで削れた氷の上でタイヤがどう動くか分からない、という事情もあります。リンクの入口にはたいてい段差やフェンスがあり、「スケート靴を履いて、自分の足で立てる人」を前提にした場所になっているわけです。
つまり、車いすユーザーや、医療的ケアが必要で寝たままの姿勢で移動する人にとって、スケートリンクは「観客席から眺める場所」になりがちでした。フィギュアの大会会場で観戦エリアのバリアフリーが整ってきたとしても、氷の上そのものは別世界だったんですね。
そこで生まれたのが、リンクを貸し切りにして、車いすやストレッチャーのまま氷上に出られる時間をつくるという発想です。貸し切りなら一般滑走のスケーターとの接触を気にせず、サポートするスタッフも十分に配置できます。
- 一般滑走では:スケート靴での滑走が前提。車いす・ベビーカーは原則として氷上に入れない
- 貸し切りイベントでは:普段使っている車いすやストレッチャーのまま氷上へ。滑れる人が押して一緒に滑る
- ポイント:特別な専用器具がなくても始められるので、「やってみたい」から参加までのハードルが低い
車いすのまま氷の上へ。「パラスケート」とは

この取り組みを全国で広げてきたのが、NPO法人 日本パラスケート協会です。前身は任意団体の「チェアスケート協会」で、2026年4月にNPO法人化されました。代表理事のさっちさん自身が車いすユーザーで、2021年3月ごろに車いすでのスケートを始めたことが活動の出発点だそうです。
協会のスローガンは「誰もが氷上を楽しめる社会へ」。公式サイトでは、車いすユーザーとスケーターが一緒に滑る「インクルーシブな氷上体験」を提供し、スポーツと芸術がつなぐインクルーシブな世界を目指すと掲げています。

「車いすは動く手すり」という発想
クラウドファンディングページの説明で、いちばん「なるほど」と思ったのがこの考え方です。パラスケートでは特別な道具は使わず、参加者は普段の車いすやストレッチャーでそのままリンクに入ります。そこへ滑れる人が押し手として付き、一緒に氷の上を滑るスタイルです。
面白いのは、押す側にとっても車いすが「動く手すり」のような存在になること。スケート初心者は、つかまるものがあるだけで一気に安心して滑れます。支える側・支えられる側という一方通行ではなく、お互いがお互いの支えになるのが、このスケートのいちばんの魅力だと感じました。
- 参加している人:車いすユーザーを中心に、知的障害・上肢障害・視覚障害のある人など、さまざま
- 実績:全国で20回以上の体験会を開催(CAMPFIREのプロジェクトページより)
- 後援:千葉市や神戸市をはじめ、自治体や教育委員会などから後援を受けている
- 会場:船橋・東京・埼玉・福岡・札幌・神戸など、北海道から九州まで各地で開催
分身ロボット「OriHime」の開発で知られる吉藤オリィさんも、OriHimeパイロットとして働くさっちさんや、元フィギュアスケート選手で理学療法士の方たちと一緒に車椅子スケートを始めた経緯をXで発信しています。医療・福祉の専門職と、スケートを知っている人が一緒に支えている点は、安心して参加するうえで大きいですね。

2026年の広がり:神戸で約100人、東京ではリンク全館貸し切り
2026年2月には兵庫県神戸市で「チェアスケート イン 神戸」が開かれ、FNNプライムオンライン(フジテレビ系)が報じています。リンクを貸し切り、車いすやストレッチャーの人を中心に約100人が参加。車いすで思い思いに滑ったり、アトラクションのような動きを楽しんだりする様子が伝えられ、参加者の「こんなに広々と安心して滑ることがないので、すごく楽しい」という声も紹介されていました。
さらに7月26日には、2025年9月に開業した東京辰巳アイスアリーナ(東京都江東区)で、リンクを全館貸し切りにした大規模イベント「パラスケートフェスタ」が企画されました。スケート体験だけでなく、デモンストレーションや展示、交流など、氷の上でもリンクの外でも参加できる内容で、参加料は一般500円・障害者無料と告知されていました。
協会はこのイベントや全国での体験会、参加支援、備品・運営費などの資金をクラウドファンディングで募っています。活動の背景や代表理事の思いが詳しく書かれているので、興味のある方はぜひ一度読んでみてください。

各地で広がる「誰もが楽しめるリンク」の工夫
パラスケート協会以外にも、「氷の上のバリア」を低くする工夫は各地で少しずつ増えています。調べてみると、アプローチはひとつではありませんでした。
医療的ケア児と家族のための体験会
医療的ケアが必要な子どもや障害のある子ども、その家族ときょうだい児のための居場所づくりをしている団体「Felice Holoholo」は、車いすのまま氷上に上がれるインクルーシブなスケート・カーリング体験を企画しています。スケート経験者や競技者、医療・福祉の専門職がサポートにつき、「初めて体験できた」「家族みんなで一緒に楽しめた」と感じられる場を目指しているそうです。
「障がいや医療的ケアの有無で、最初から選択肢が狭まらないようにする」という考え方は、スケートに限らず大事な視点だと思いました。
施設側のバリアフリーと、公営リンクの教室
リンクそのもののバリアフリー化も進んでいます。パラスケートフェスタの会場になった東京辰巳アイスアリーナ(田中貴金属アイスアリーナ)は、スケートやアイスホッケーに加えて、パラアイスホッケーや車いすカーリングにも対応した通年リンク。東京都のパラスポーツ情報サイトによると、スロープやエレベーター、点字ブロック、手すり付きトイレ、車いす利用者向けの観覧スペースなどを備えていて、障害者手帳の提示による入場料の減免もあるとのことです。
また、新潟市のMGC三菱ガス化学アイスアリーナでは、小学生以上の知的障害のある人とその保護者を対象にしたレクリエーション教室を開いていて、インストラクターのほかボランティアがサポートする形をとっています。こうした「定期的に通える場」があるのは心強いですね。
補助具や「氷じゃないリンク」も入口に
障害の有無に限らず、「転ぶのが怖い」「寒いのが苦手」という人にとってのハードルを下げる工夫もあります。
- 補助具の貸し出し:小さい子ども向けの二枚刃スケート靴や、つかまって進むスケートヘルパーを用意しているリンクもある
- 樹脂製のリンク:氷の代わりに樹脂パネルを使う「氷じゃないスケートリンク」は、転んでも濡れたり冷えたりしにくく、商業施設などで増えている
- 貸し切り・時間帯の工夫:空いている時間帯や貸し切り枠を使えば、周りを気にせず自分のペースで滑れる
「スケート=運動神経がいい人のもの」というイメージが、こうした工夫でだいぶ変わってきていると感じます。
世界にも広がる「インクルーシブスケーティング」

海外に目を向けると、障害のあるスケーターが競技として参加できる国際大会もあります。Inclusive Skatingは、視覚障害・知的障害・身体障害などのあるスケーターを優先しながら、誰もが参加できるスケートの大会を開いている国際団体です。
公式サイトによると、次の世界大会は2026年10月26日〜30日、イギリス・ロンドンのリー・バレー・アイスセンターで予定されています。会場での参加に加えて、オンラインでの「バーチャル参加」、さらに氷を使わないローラースケートなどでのオフアイス参加の枠もあり、技術レベルに応じたクラスで競う仕組みになっているそうです。
日本パラスケート協会の公式サイトでは、2025年のインクルーシブスケーティング世界大会・シンクロデュエット部門で金メダルを獲得したことも紹介されています。車いすユーザーと立って滑るスケーターがペアで演技をする姿は、フィギュアのペアやアイスダンスを見慣れてきた身としても、ぜひ一度見てみたいと思いました。
観戦ファンのカエデが感じたこと
フィギュアスケートを観るようになって感じるのは、この競技が「ジャンプの回転数」だけでなく、音楽の表現やスケーティングの美しさまで含めて評価される、スポーツと芸術のあいだにあるものだということです。採点表を読むようになって、技術点(TES)と演技構成点(PCS)の両方があることの意味が少し分かってきました。

そう考えると、車いすの人と押し手が息を合わせて氷上を滑るパラスケートは、フィギュアの「表現する楽しさ」ととても相性がいいのかもしれません。協会が掲げる「スポーツと芸術がつなぐ」という言葉にも、そういう意味が込められているように感じました。
もうひとつ思ったのは、「観る」と「滑る」の距離が縮まるということ。テレビや会場で選手の演技を観て「氷の上ってどんな感じなんだろう」と思った人が、障害の有無に関係なく実際に氷に乗れる。観戦ファンが増えることと、滑る人が増えることは、きっとつながっているはずです。
参加してみたい・応援したいときは
記事を書きながら、「関西でも体験会があれば行ってみたいね」と妻と話していました。参加や応援を考えている方に向けて、調べて分かったことを整理しておきます。
- 日程は公式の告知で:パラスケートの体験会はリンクの貸し切りで行われるため、開催は不定期。日本パラスケート協会の公式サイトやX・Instagram・LINEで告知される(2026年9月時点で関西の今後の日程は「詳細はお待ちください」との案内)
- サポート役としての参加も:押し手として一緒に滑る人も大事な参加者。スケートが得意な人の力が活きる場でもある
- 体調面は事前に相談:医療的ケアが必要な場合や、寒さが体に影響しそうな場合は、主催者に事前に確認しておくと安心
- 応援の方法:クラウドファンディングへの支援や、SNSでの情報のシェアも立派な応援
リンクの中は、夏でもしっかり冷えます。観戦用にまとめた防寒の持ち物リストは、体験会に参加するときや付き添いのときにも役立つと思うので、よければ参考にしてください。

関西でふだん滑れる通年リンクは、別の記事で地域別にまとめています。体験会の会場になりうる施設を知っておくと、告知が出たときにイメージしやすいかもしれません。

まとめ
- 一般のスケートリンクでは、車いすやベビーカーのまま氷の上に出ることは基本的にできない
- NPO法人 日本パラスケート協会は、リンクを貸し切って普段の車いすやストレッチャーのまま滑れる体験会を全国で20回以上開いてきた
- 2026年は神戸で約100人が参加したイベントが報じられ、東京辰巳アイスアリーナでは全館貸し切りの「パラスケートフェスタ」も企画された
- 医療的ケア児向けの体験会、施設のバリアフリー化、補助具や樹脂リンクなど、「氷上のバリア」を下げる工夫は各地で増えている
- 海外では Inclusive Skating の世界大会が2026年10月にロンドンで予定されている
車いすが「動く手すり」になり、支える人も支えられる人も一緒に笑顔になれる。そんなリンクがもっと身近になったら、フィギュアの観戦ももっと楽しくなりそうです。関西での体験会の告知が出たら、夫婦で参加してみたいと思います。

