こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
以前「フィギュアスケート観戦の始め方」という記事で、採点のしくみをざっくりと紹介しました。総得点は技術点(TES)と演技構成点(PCS)の合計から減点を引いたもの、というところまでは書いたのですが、実際にテレビの得点表示や会場のスコアボードを見ると、細かい記号や数字が並んでいて「結局これは何を見ればいいの?」となる方も多いのではと思います。わたしもまさにそうでした。
この記事では、実際の得点表(プロトコル)に出てくる記号や数字の意味を、もう一歩踏み込んで整理します。採点そのものはジャッジの仕事なので、わたしたちが技の良し悪しを断定するようなことはせず、あくまで「見る側が数字を読み解けるようになる」ための整理だと思って読んでもらえたらうれしいです。
採点ルールはISU(国際スケート連盟)が定めていて、年によって細部が見直されます。本記事は2026年9月時点の情報をもとにしていますので、正確な最新ルールは公式で確認してください。

得点表(プロトコル)の全体像
フィギュアスケートの得点表は、大きく分けて3つのブロックでできています。
| ブロック | 内容 |
|---|---|
| 技術要素点(TES) | ジャンプ・スピン・ステップなど、実施した技1つ1つの得点の合計 |
| 演技構成点(PCS) | スケーティング技術・構成・表現力など、演技全体の質を3項目で評価した得点 |
| 減点 | 転倒やルール違反など、演技全体から差し引かれる得点 |
総合得点 = 技術要素点(TES) + 演技構成点(PCS) − 減点、という式は覚えておくと、得点表のどのブロックを見ているのか迷わなくなります。以下、それぞれのブロックを順番に見ていきます。
技術要素(TES)表の見方

TES表には、演技した順番に技が1行ずつ並びます。列の意味はだいたい次のとおりです。
- 番号:実施した順番(1、2、3…)
- 技名:3Lz(トリプルルッツ)などISUの略記法で表示される
- 基礎点:その技の難度に応じてあらかじめ決まっている点数
- GOE:実行の出来栄えに応じて基礎点に加減算される点数
- 技の得点:基礎点とGOEを合算した、その技の最終得点
技名の表記を読み解く
- 3Lz+3T:「+」はジャンプを連続して跳ぶコンビネーションの意味。トリプルルッツの直後にトリプルトゥループを跳んでいる
- CCoSp4:スピンの種類(コンビネーション・キャメルスピンなど)を表す略記と、末尾の数字がレベル(1〜4)
- StSq3:ステップシークエンス、末尾の数字が同じくレベル
ジャンプ判定の記号(<、<<、e、!)
技名の横に小さな記号がつくことがあります。これはジャッジではなく技術審判(テクニカルパネル)が判定するもので、記号によって基礎点そのものが変わります。
- <(アンダーローテーション):回転がわずかに(4分の1回転超〜半回転未満)足りない状態。基礎点が減額される
- <<(ダウングレード):回転が半回転以上足りない状態。1段階低い回転数のジャンプとして採点される
- e(エッジエラー):踏み切りのエッジ(刃の向き)が明らかに間違っている状態。基礎点が2割ほど減額されたうえ、GOEも大きく下がる
- !(アテンション):エッジが不明瞭という注意喚起。基礎点は変わらないが、GOEの評価には影響しうる
この4つの記号を知っているだけで、得点表を見たときに「なぜこの技の得点が思ったより低いのか」がわかるようになります。実況や解説で「回転不足」「エッジの判定」と言われたときに、得点表のどこを見ればいいかも見当がつくはずです。
GOE(出来栄え点)の仕組み

GOE(Grade of Execution、出来栄え点)は、-5から+5までの11段階でジャッジが評価します。0が「基準どおりの出来」で、プラスは基礎点に上乗せ、マイナスは基礎点から差し引かれます。同じ技でも、GOEの±1がもたらす点数の増減は技の難度によって変わり、難しい技ほど上下の振れ幅が大きくなる仕組みです。
複数いるジャッジのうち、最高点と最低点を除いた残りを平均したものが、その技のGOEとして採用されます。極端に甘い・辛い評価が1人いても、結果に大きくは影響しない仕組みになっています。
ちなみにGOEは以前は-3〜+3の7段階でしたが、2018-2019シーズンから現在の-5〜+5に変わりました。出来栄えの差がより細かく点数に反映されるようになった変更です。
演技構成点(PCS)の見方
PCS表は、TESとは別の観点で演技全体の質を評価します。評価項目は次の3つです。
- スケーティングスキル:滑りの技術そのもの。エッジの深さ、スピード、氷面の使い方など
- コンポジション:プログラムの構成。曲の展開と技の配置、リンク全体の使い方のバランス
- プレゼンテーション:表現力。音楽との一体感や、見せ方の説得力
各項目は0.25点刻みで0.25〜10.00点の範囲でジャッジが採点し、GOEと同じく最高・最低を除いて平均されます。この平均点に、種目やショート・フリーによって決まった係数がかけられて最終的なPCS点になります。係数の具体的な数値は毎シーズン公式に発表されるので、正確なところはISU公式サイトで確認するのが確実です。
減点(デダクション)のルール
減点は演技全体から一律で差し引かれるもので、主なものは次のとおりです。
- 転倒:1回につき-1.0点。ペア・アイスダンスで2人とも転倒した場合は-2.0点
- 衣装・小道具の違反:衣装の一部が外れて氷上に落ちた場合などに-1.0点
- 時間超過・不足:規定の演技時間から外れた場合に減点
転倒した選手の得点がそこまで大きく落ちないように見えることがありますが、それは「転倒した技そのもののGOEが大きく下がる」+「-1.0点の減点」が同時に発生しているためで、決して転倒が軽く扱われているわけではありません。
レベル(基礎点)の意味
スピンやステップシークエンスには、ジャンプの回転数のような明確な数字がない代わりに「レベル」という区分があります。技術審判が、規定されたポジションの数や難しい入り方・出方などの要素をいくつ満たしているかを見て、レベル1(もっとも基本的)からレベル4(もっとも高難度)までを判定し、それに応じて基礎点が変わります。
レベルはGOEとは別の基準です。レベル4の技でも出来栄えが悪ければGOEはマイナスになりますし、逆にレベル2でも丁寧にきれいに滑ればGOEでプラスがつきます。「難しいことをやっているか(レベル)」と「それをどれだけうまくやったか(GOE)」は、分けて見るとわかりやすいです。

中継やスコアボードで実際に見るポイント

テレビ中継や会場のスコアボードでは、得点表の全項目が出るわけではなく、要約された数字が表示されることが多いです。初めのうちは、次の3つだけ追えれば十分だと思います。
- TSS(合計得点):いちばん大きく表示される、その演技の最終得点
- TES(技術要素点)とPCS(演技構成点)の内訳:技で稼いだのか、演技の質で稼いだのか、選手ごとの持ち味が見えてくる
- 暫定順位:演技が終わるたびに更新される順位表。誰の得点が確定していて、誰がまだ滑っていないかを一緒に見ておくと状況がつかみやすい
全部の記号を覚えようとしなくても大丈夫です。わたしも最初はTSSとGOEの記号だけ追いかけていて、少しずつ他の項目にも目がいくようになりました。
よくある質問
Q. 記号や数字を全部覚えないと楽しめませんか?
そんなことはありません。まずは総合得点と順位だけ見ていても十分楽しめます。「あの技、得点が高かったな」「さっきのジャンプ、何か記号がついていたな」と気になったときに、この記事を見返しながら得点表を確認する、くらいの付き合い方で十分だと思います。慣れてくると、実況の「回転不足の判定が入りました」という一言が、得点表のどの記号のことを言っているのか自然とわかるようになってきます。
Q. GOEがマイナスでも減点(デダクション)にはならないのですか?
はい、別のものです。GOEはあくまで「その技の基礎点に対する加減算」で、減点(デダクション)は演技全体から一律で差し引かれるものです。転倒のように、GOEが下がると同時に減点も発生する、ということはよくあります。
Q. 得点表(プロトコル)はどこで見られますか?
多くの国際大会では、競技終了後にISUや大会公式サイトでPDF形式のプロトコルが公開されます。中継のリアルタイム表示では追いきれなかった細かい記号も、あとからゆっくり見返せるのでおすすめです。
まとめ
- 総合得点=技術要素点(TES)+演技構成点(PCS)−減点
- TES表は「技名・基礎点・GOE・技の得点」の並び。技名の「+」はコンビネーション、末尾の数字はレベル
- ジャンプの記号は<(アンダーローテーション)、<<(ダウングレード)、e(エッジエラー)、!(アテンション)の4種類
- GOEは-5〜+5の11段階。最高・最低を除いた平均で決まる
- PCSはスケーティングスキル・コンポジション・プレゼンテーションの3項目。種目・SP/FSごとの係数がかかる
- 減点は転倒-1.0点などが代表例。GOEの低下と同時に発生することが多い
- スピン・ステップの「レベル」は基礎点を決める区分で、GOE(出来栄え)とは別の基準
数字や記号の意味がわかってくると、実況や解説で言っていることと得点表がつながって、観戦がもう一段階おもしろくなります。次にNHK杯や全日本を見るときは、暫定順位が入れ替わる瞬間だけでなく、その裏にある得点表の中身にも少し注目してみようと思っています。わたしたちもまだ勉強中なので、少しずつ得点表を読めるようになっていきたいです。

