こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
ヨーロッパを代表する名窯・マイセン。その「現代マイセン」を代表するデザイナー、ハインツ・ヴェルナー(1928–2019)の仕事をたどる展覧会「巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン)―現代マイセンの磁器芸術―」が、2026年11月21日(土)〜2027年1月31日(日)に京都・岡崎の細見美術館で開催されます。
《アラビアンナイト》《サマーナイト》《ブルーオーキッド》といった代表的なシリーズのコーヒーサービスやティーサービス、陶板画を通して、物語の世界を磁器に描いたヴェルナーの魅力を紹介する展覧会です。東京・郡山・愛知と巡回してきた全国巡回展で、関西で見られるのは細見美術館だけ。この記事では、会期・料金などの基本情報から章ごとの見どころ、マイセンの歴史の予習ポイントまで、美術館のプレスリリースをもとにまとめました。
「ハインツ・ヴェルナー展」京都展の開催概要

まずは基本情報です。細見美術館が2026年10月14日に公開したプレスリリースの内容に基づいています。
- 展覧会名:巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン)―現代マイセンの磁器芸術―
- 会期:2026年11月21日(土)〜2027年1月31日(日)
- 会場:細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町6-3)
- 開館時間:10:00〜17:00
- 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、年末年始(12月25日(金)〜1月4日(月))
- 入館料:一般2,000円/学生1,500円
- 主催:細見美術館、京都新聞(予定)/協力:マイセン磁器日本総代理店 ジーケージャパンエージェンシー
細見美術館があるのは、京都市京セラ美術館や京都国立近代美術館、平安神宮が集まる岡崎エリア。美術館めぐりの拠点として便利な場所です。年末年始(12/25〜1/4)は休館なので、冬休みに行こうと考えている方は日程に注意してください。
なお、細見美術館は過去の展覧会で、学生証の提示を条件に中学生〜大学生を学生料金の対象としてきました。今回の対象範囲や各種割引は、来館前に公式サイトで確認しておくと安心です。最新情報は美術館の公式Xでも発信されています。

予習:マイセンってどんな窯?

展覧会は「プロローグ 名窯の誕生」から始まります。ヴェルナーの作品を見る前に、マイセンという窯の成り立ちを押さえておきましょう。
- 東洋磁器へのあこがれ:薄くて硬く、真っ白な東洋の磁器は、17世紀以降のヨーロッパで王侯貴族が競って集める憧れの品だった
- 1710年に誕生:熱心な東洋磁器コレクターだったザクセンのアウグスト強王(1670–1733)が、マイセンに王立磁器製作所を設立
- 「白い金」の再現:近郊で採れる良質なカオリンを使い、ヨーロッパ初の硬質磁器の焼成に成功
- 日本の柿右衛門様式:1720年代には、強王が愛した柿右衛門様式の色絵やシノワズリ(中国趣味)の絵付けにも成功。西洋の器の形と東洋の意匠の融合は、いまもマイセンに受け継がれている
ヨーロッパを代表する名窯の原点に、日本の伊万里焼(柿右衛門様式)へのあこがれがあったというのは面白いポイントです。プロローグでは、肥前有田の色絵の皿とマイセンの色絵の皿が並ぶ予定とのことで、見比べるとそのつながりがよくわかりそうです。
ハインツ・ヴェルナーってどんな人?
- 生まれ:1928年、マイセン近郊の町コズヴィッヒ
- 15歳で養成学校へ:1943年、ドレスデン芸術アカデミーの分校として1764年に設立されたマイセン養成学校に入学。1950年代には絵付師として認められる
- デビュー:1958年のライプツィヒ・メッセ(見本市)で装飾デザイナーとしてデビュー
- 5人のグループ:1960年、マイセン創立250年を機に結成された「芸術の発展を目指すグループ」の設立メンバーに
- 教授として:1981年、ハレのブルク・ギービッヒェンシュタイン美術大学から名誉教授の称号を受け、「ハインツ・ヴェルナー教授」と親しまれる。2019年に91歳で逝去
「芸術の発展を目指すグループ」は、ヴェルナーを含む5人のアーティストの集団です。1967年には、かつてアウグスト強王の狩りの城だったモーリッツブルク城にアトリエが置かれ、彼らは森で狩りを楽しんだり、楽器の演奏会を開いたりしながら作品を生み出していったそうです。旧東ドイツの時代に、生きる喜びと平和への想いを込めた“磁器芸術”が生まれていった——という背景を知ると、器の見え方も変わってきます。
見どころ①:物語を描いた名シリーズ

展覧会のタイトルにもなっている「物語(メルヘン)」。その中心となるのが第2章「名シリーズの時代」です。ヴェルナーはドレスデンのツヴィンガー宮殿に集められたマイセンの名品、とくに18世紀の絵付師ヘロルトの時代の作品を熱心に研究し、そこから新しいシリーズを次々と生み出しました。
- 《ほら吹き男爵(ミュンヒハウゼン)》:ドイツで古くから親しまれてきた物語をモチーフにしたコーヒーサービス。名シリーズ誕生のきっかけになった作品
- 《アラビアンナイト》:『千夜一夜物語』の世界を描いた代表作。金彩と色絵で、異国の物語がカップの上に広がる
- 《サマーナイト》:《アラビアンナイト》と並ぶ、物語から着想を得た代表作。人形と組み合わされた幻想的なティーサービスも
- 《ブルーオーキッド》《狩り》:マイセンの自然描写に新風を吹き込んだシリーズ。《狩り》はモーリッツブルク城のアトリエを象徴する名作とされる
カフェ巡りが趣味の身としては、コーヒーサービス(カップ&ソーサーやポットのセット)がずらりと並ぶというだけで心が躍ります。普段は「どんな豆を、どう淹れるか」ばかり気にしていますが、器ひとつで一杯のコーヒーの時間がこんなにも物語めいたものになるのか、と思わせてくれそうな展示です。章の中では、ヴェルナー直筆の陶板画もあわせて紹介されます。
見どころ②:光と色彩の時代、そして日本とのつながり
第3章「光と色彩の時代」では、1980年代以降のヴェルナーが紹介されます。デザインは具体的なモチーフを超え、花・雲・風・ジュエリーから男女の愛まで、さまざまなテーマを踊るような筆致で描くようになっていきました。マイセンの内部からも「なんと若い感性か!」と驚きの声が上がったと言われるほどで、新しい窯の導入や彩色技術の開発といったマイセンの技術革新がそれを支えたそうです。
日本との関わりも見逃せません。1973年の日本と東ドイツの国交樹立をきっかけに、日本でマイセンの人気が高まっていきます。ヴェルナーは1975年に初来日し、日本の風景に魅了されたそうで、その後も日本でのマイセン展にあわせてたびたび来日しました。柿右衛門様式へのあこがれから始まったマイセンと日本の縁が、20世紀にも続いていたというのは、なんだか胸が熱くなる話です。
エピローグ「受け継がれる意志」では、65歳で定年退職した翌年の1994年に発表した集大成《ドラゴンメロディ》など晩年の作品と、ヴェルナーの意志を継ぐ現在のマイセンのアーティストたちが紹介されます。
冬ならではの「季節を彩るマイセン」コーナー
京都展ならではの楽しみが、クリスマスからお正月へと移ろう季節を楽しむ特別コーナー「季節を彩るマイセン」です。年内はクリスマスを彩る作品、年末の展示替え後は新年を寿ぐ作品が並ぶ予定。12月中と1月とで、違う展示を楽しめることになります。
本展は全国を巡回してきた展覧会で、細見美術館は4会場目です。
- 泉屋博古館東京:2025年8月30日〜11月3日(終了)
- 郡山市立美術館:2025年11月22日〜2026年1月18日(終了)
- 愛知県陶磁美術館:2026年5月30日〜9月27日(終了)
- 細見美術館(京都):2026年11月21日〜2027年1月31日
巡回情報は、展覧会の企画協力を担う株式会社キュレイターズのページにまとまっています。

鑑賞をもっと楽しむためのヒント
- 12月と1月の2回行くのもあり:「季節を彩るマイセン」コーナーは年末に展示替え。クリスマス版と新年版の両方を見比べられる
- 器の「形」にも注目:絵付けはヴェルナーでも、器形は造形師ルードヴィッヒ・ツェプナーなど別の作家が手がけていることが多い。キャプションの「器形」欄をチェックすると、グループでの共同制作の様子が見えてくる
- プロローグの日本の器と見比べる:柿右衛門様式の皿とマイセンの皿を並べて見ることで、マイセンの原点がよくわかる
- 岡崎の美術館をはしご:京都市京セラ美術館や京都国立近代美術館まで歩いてすぐ。1日で何館も回れるのが岡崎エリアの魅力
器の展覧会といえば、同じ京都では京都駅の美術館「えき」KYOTOで、フィンランドのデザイナー、カイ・フランクの回顧展も開かれます(11月3日〜12月20日)。華やかな物語を描いたマイセンと、装飾を削ぎ落とした北欧デザイン。正反対の器の世界を見比べるのも楽しそうです。

PR・広告
まとめ
- 会期:2026年11月21日(土)〜2027年1月31日(日)、細見美術館(京都・岡崎)
- 休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、年末年始12月25日〜1月4日
- 料金:一般2,000円・学生1,500円
- 内容:《アラビアンナイト》《サマーナイト》《ブルーオーキッド》など現代マイセンの名シリーズ、陶板画、晩年の作品
- 京都展の特色:関西唯一の会場。クリスマス→新年と展示替えする「季節を彩るマイセン」コーナーあり
カップ1客の上に広がる、夢のような物語の世界。冬の岡崎で、ヴェルナーが描いたメルヘンに会いに行ってみませんか。

