こんにちは。風読珈琲店のカエデです。
2026年6月3日から9月6日まで、京都市京セラ美術館 新館 東山キューブで開催された「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」。イギリスのテート美術館のコレクションを中心に、1990年代の英国美術シーンを塗り替えた作家たちの作品が関西に集まった展覧会でした。
京都展は9月6日(日)に閉幕しています。この記事では、開催概要と東京からの巡回の経緯、展示の見どころを記録として振り返ります。YBAという美術運動を知るための基礎知識としても読めるようにまとめました。
展覧会の概要

「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」は、ロンドンのテート美術館が所蔵する現代美術コレクションを中心に構成された展覧会です。50組を超える作家による約90点の作品を通して、1990年代のイギリスで巻き起こった「YBA(Young British Artists)」という美術運動が、いかにその後の世界のアートシーンに決定的な影響を与えたかを検証する内容になっています。
- 会期:2026年6月3日(水)~9月6日(日)
- 会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124)
- 開館時間:10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
- 休館日:月曜日(7月20日は開館)
- 観覧料(前売):一般2,100円/大学生1,300円/高校生700円/中学生以下無料
展覧会の公式サイトには、出品作家や展示構成などの情報がまとまっています。

同じ時期、京都市京セラ美術館では歌川国芳の展覧会も開かれていました。江戸の絵師と90年代英国の作家という、時代も国も異なる二つの「表現の熱狂」が同じ館に並んだ夏でした。

YBA(Young British Artists)とは何か

YBAとは、1980年代末から1990年代にかけてロンドンを中心に台頭した若手アーティストの一群を指す言葉です。その源流とされるのが、1988年にダミアン・ハーストらが企画した「フリーズ(Freeze)」展。ロンドン東部の廃倉庫を会場に、当時まだ美術学校の学生・卒業生だった作家たちが自主的に開いた展覧会で、ここから既存の価値観にとらわれない表現の潮流が一気に広がっていきました。
本展には、そのダミアン・ハーストをはじめ、トレイシー・エミン、ヴォルフガング・ティルマンス、ジュリアン・オピー、ルベイナ・ヒミド、スティーヴ・マックイーンなど、YBAを象徴する作家たちの作品が並びます。
既存の枠組みを壊した表現の数々
- コンセプチュアル・アート:身の回りの日用品や動物の標本など、意外な素材をそのまま作品として提示する手法。既存の「美術とは何か」という問いを揺さぶる
- ドキュメンタリー的な写真:ティルマンスに代表される、日常のスナップショットをそのまま作品化するアプローチ
- 映像インスタレーション:マックイーンら映像作家による、鑑賞者を空間ごと包み込む展示形式
従来の絵画や彫刻の枠を軽々と飛び越え、ジャンルを横断する表現が次々と生まれたのがYBAの最大の特徴です。作品を通して、当時のロンドンの熱気をたどれる構成でした。
出品作家それぞれの代表的な仕事
ダミアン・ハーストは、サメやウシなど動物の遺体をホルマリン漬けにした立体作品で「生と死」を直接的に問いかける作風で知られ、YBAの象徴的存在として語られることが多い作家です。トレイシー・エミンは自身の私生活や記憶をテーマに、テントやネオンサインといった意外な素材で赤裸々な自己表現を試みてきました。ヴォルフガング・ティルマンスはドイツ出身ながらロンドンを拠点に活動し、若者文化やクラブシーンをとらえたスナップショット的な写真表現でターナー賞を受賞しています。
ジュリアン・オピーは輪郭線と平面的な色面だけで人物を描くシンプルなポートレートで、後にCDジャケットなどポップカルチャーの領域にも影響を広げました。ルベイナ・ヒミドは移民や人種というテーマを鮮やかな色彩の絵画に落とし込み、2017年には女性として、また黒人女性として初めてターナー賞を受賞しています。スティーヴ・マックイーンは映像作家として出発し、後に映画『それでも夜は明ける』でアカデミー賞を受賞するなど、美術と映画の両分野を横断するキャリアを築いてきました。こうした一人ひとりのその後の歩みを知ってから作品を観ると、90年代の熱狂が一過性のブームでは終わらなかったことがよく分かります。
テート美術館について
今回の展覧会の作品を所蔵するテート美術館は、ロンドンを拠点にテート・ブリテン、テート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの4館で構成される、イギリスを代表する国立美術館グループです。中でもテート・モダンは、旧発電所を改装した巨大な建物で2000年に開館し、YBA世代を含む現代美術の一大拠点として世界中から観客を集めてきました。
つまり本展は、YBAという運動そのものだけでなく、「その作品を今も収集・保存し続けている美術館の視点」から90年代を振り返る展覧会でもあります。単なる懐古展ではなく、テート美術館が現在進行形で更新し続けているコレクションの一部として、これらの作品がどう位置づけられているのかを知ることができるのも本展ならではの面白さでした。
見どころ:90年代の熱狂が世界に与えた影響
本展の面白いところは、単にYBAの代表作を並べるだけでなく、その後の「BEYOND(その先)」、つまりYBAの熱狂が2000年代以降の世界の美術シーンにどう波及していったかまで射程に入れている点です。90年代当時、若手アーティストの自主企画から始まった動きが、やがてテート・モダンの開館やターナー賞の注目度上昇など、イギリスの美術制度そのものを塗り替えていく過程が、作品と資料の両面からたどれる構成になっています。
京都会場は、2020年のリニューアルで誕生した新館「東山キューブ」。現代美術の大型展示に対応した空間で、映像インスタレーションを含む約90点が展示されました。
京都市公式の観光情報サイトでも、会期中に本展が紹介されていました。

開催を振り返って:東京から京都への巡回

本展は、東京・六本木の国立新美術館(2026年2月11日〜5月11日)での開催に続く巡回展でした。京都展は東京展と一部の展示内容が異なる構成とされ、関西で90年代英国アートをまとめて観られる機会として注目を集めました。
- 東京展:国立新美術館(2026年2月11日〜5月11日)
- 京都展:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ(2026年6月3日〜9月6日)
- 規模:50組を超える作家による約90点
閉幕日の9月6日には、展覧会の公式Xが京都会場の閉幕を告知し、東京・京都の2会場に来場した人たちへの感謝を伝えています。なお、京都展の来場者数は、この記事を書いている時点では公式に発表されていません。

現代アートを観るときのヒント
YBAのような現代アートは「難しそう」と思われがちです。最初から作品の意味を読み解こうとせず、まずは色・素材・スケール感といった見た目の印象を受け止め、そのあとで解説を読むと背景がすっと入ってきます。今後、テート美術館のコレクション展や英国現代美術の展覧会が関西に来たときにも役立つ観方です。
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まとめ
「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」は、1990年代のロンドンで生まれた若手アーティストたちの熱狂と、それが世界の美術シーンに与えた影響を、テート美術館の所蔵作品でたどる展覧会でした。
- 会期:2026年6月3日(水)〜9月6日(日)※閉幕
- 会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ(東京・国立新美術館からの巡回)
- 内容:ダミアン・ハースト、トレイシー・エミンら50組超・約90点
関西の美術館で開催中・開催予定の展覧会は、まとめページで随時更新しています。次のお出かけ先探しにどうぞ。それではまた次の記事で。


